今年(2024)のGWの大掃除で発掘された本のレビューは大方終わりましたが、その前に娘夫婦が宿泊した時に大慌てでスースケースにしまい込んだ本があり、それらの本のレビュー書きを終了させたく思っています。記録によれば、まだまだ世の中がコロナ騒動の真っ最中だった、3年前(2021.6)に読み終わった本です。
最近(2024.7)アメリカ経済はもう長く持たないだろう、という本を何冊か読みましたさら、この本は今から3年以上前に書かれた本です。ソ連が崩壊する数年前(1980年頃)も同じ状況だったと思います、ソ連崩壊次は日本はそちら側にいなかったのですが、今回の場合はかなり日本も栄養を受けることになるでしょう。
読み終わってからかなり時間が経過していますので、レビューを書きながらこの本のポイントを振り返っていたいです、
以下は気になったポイントです。
・1980年代以降はアメリカの財政赤字と、それを賄うための国債発行は、日本・ドイツ・中国といった諸外国と、中央銀行であるFRBによって支えられてきた(p18)米国ダウ平均は上昇しているが、好調な企業が多いこともあるが、超低金利で借入を行い、それを自社株買いや配当に回す「株主還元バブル」が起きているから、自己資本最小化=借入最大化によるROE(自己資本利益率)の最大化を図ってきた(p21)
・リーマンショックによる危機は、ごく短期間で確定したが、コロナのパンデミックに対応するための財政赤字は長期間続く、これがリーマンショックは世界大恐慌にならずに、今回は世界大恐慌につながる可能性の一つである(p34)2つ目の理由は、株価が急激に下がった時、ゼロ金利(2020,9現在)なので、金融政策によって景気を刺激できず、株価の暴落による経済への悪影響は短期間では終わらず、長期化する可能性がある、これがリーマンやIT バブル崩壊とは異なる点で、世界大恐慌につながる可能性がある(p35)
・1929年の世界大恐慌、2000年のITバブル崩壊も株式市場の暴落がきっかけであった、これに対してリーマンショックは不動産市場から始まった、そして今回の「21世紀型大恐慌」では、戦後初めて、国債市場を震源地として、株式市場・通貨ドルと連動するというのが最大の特徴である(p42)
・B IS規制は、日本経済の要である「メインバンク製」を終わらせることを目的に作られたと考えている、日本の銀行の自己資本比率は、BIS規定に定める算出方法では、3−4%と、8%の基準を満たしていなかった。銀行が行う貸付、所有する株式、不動産はリスク100%、OECD加盟国の国債リスクは0%、ギリシア国債もリスク0%であった(p51)さらにBIS規制導入の目的は、米国債を日本の銀行に買わせること、リスクゼロなので自己資本比率が上がる(p52)
・各国の政府や政治家にしてみれば、消費税を上げて税収を増やすよりも、国債を発行する方が簡単で、しかも調達した資金で大盤振る舞いができ、国民からの人気が上がる、なので銀行が積極的に国債を買うようなBIS気鋭を大歓迎した、これが各国の国債発行が今日まで増え続けてきた根本的な理由である(p54)アメリカ国債を買えば、ドルは上がり、円は下がる(p58)
・アメリカと世界の構造問題(経済と社会の持続可能性の低下、国民間の格差)を解決するには、今も続く世界秩序の根源に遡る必要がある、それは1941年8月の大西洋憲章に遡ることが不可欠である、当時ナチスドイツがヨーロッパ大陸を席巻し、イギリスへの侵略が迫っていた。アメリカの対独戦を懇願するイギリスのチャーチル首相に対して、アメリカのルーズベルトは、ドイツや日本の戦争を引き起こしたのは、英米両国の責任が重いとして、戦後の行動を約束させたのが大西洋憲章であった。まず、イギリス始め欧州諸国の海外植民地は独立を認める、次に、ドイツや日本の軍事戦略を誘発した保護貿易を廃止、自由貿易を世界のルールとすること、これを実現するための国際連合をアメリカが作るので、イギリスが協力すること。人種差別の根拠だった西洋諸国の400年に及ぶ植民地支配は、1941年の第二次世界大戦によって、ようやく終わりを告げた(p69)
・石炭経済を牽引して覇権国になったのがイギリス、石油経済を牽引して覇権国になったのがアメリカ(p87)21世紀型大恐慌の後には、太陽経済、となるだろう。太陽経済の優れてている点は、1)永遠、2)無尽蔵、3)平等、4)無料、である(p89)
・電気がほとんどタダになる正解が2050年位んはやってくると予想する、インターネットが生まれたのが1980年代、ウェブが産声を上げたのは1990年、それから約30年で世界中でインターネットが使える世界が実現した、これと同じくらいのスピードで電力システムの変化が起きれば、30年後の2050年には誰もがほとんどタダで電気をいつでもどこでも使える様になると考える(p96)
・自電車(自動運転電気自動車)が普及すれば、地方での移動(現在は都市のみ公共交通システムあり、地方は車移動が90%)も非常に便利になる、そうすると不動産コストが安い地方への大都市からの移動も決断しやすくなる(p102)
・水素を使って鉄鉱石を燃焼する「水素還元製鉄」であれば、低純度の鉄鉱石でも精製が可能になる(p107)
・太陽経済が中心になれば、戦争までして独占したいものがなくなるだろう、次のエネルギーの主役である太陽エネルギーはどうやっても独占できない。これが、21世紀型大恐慌からは、第三次世界大戦が起きない本質的な理由である(p115)裏を返せば、石油経済にしがみつき、独占・競争の経済原理で行動する国や地域は、いつまでたっても不況から抜け出せず、資金も集められない(p116)
・今後は、デジタル化とネトワーク化が進む、コロナ禍で始まった「リモートワーク」「オンライン会議」は「地方分散」の始まりである。地方分散が大きく進むのは、エネルギーの主力である電力とお金を扱う金融の両分野である。電力と金融のデジタル化・ネットワーク化が地町経済のデジタル化・ネットワーク化との相乗効果をもたらして、地方の方が「安い」「やりやすい」「儲かる」「ゆとりがある」「子育てしやすい」「老後も安心」となる(p121)
2021年6月3日読破
2024年7月10日作成