小松正の作品一覧
「小松正」の「社会はヒトの感情で進化する」「なぜヒトは心を病むようになったのか?」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
- 作者をフォローする
- フォローすると、この作者の新刊が配信された際に、お知らせします。
無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで200万冊以上配信中!
「小松正」の「社会はヒトの感情で進化する」「なぜヒトは心を病むようになったのか?」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
ビジネス・実用
ビジネス・実用
Posted by ブクログ
■パートナー間暴力に影響する「K因子」
パートナーへの暴力を行使する・しないという個人差を生み出す要因について「生活史理論」の観点からアプローチする研究が行われている。
「生活史理論」は生物の生活史が自然選択による適応進化の結果として形成されてきたという前提に基づいて、生物の種間や種内の生活史選択の多様性について理解するための枠組みである。「生活し選択」の代表的な例は「性急な戦略」と「緩慢な戦略」の二つである。
「性急な戦略」の特徴としては早い成長、多産、高い死亡率、短い寿命等が挙げられる。
「緩慢な戦略」は安定的で安全な環境におかれた生物に適していると考えられる。
今日では、個人がどのくらい「緩慢な生活史戦略」を採用しているのかを示す指標(尺度)が開発されており、「K因子」と呼ばれている。
「K因子」は外向性、誠実性、神経症傾向など個人の性格や行動傾向に基づいて、具体的な数値として算出される。ある個人について「K因子」の値が大きいということは、「緩慢な生活史戦略」の傾向が強い、言い換えると「性急な生活史戦略」の傾向が弱いことを意味する。
「緩慢な生活史戦略」はパートナー感暴力を抑制する。言い換えれば、「性急な生活史戦略」はパートナー間暴力を促進することを意味する。
「性急な生活史戦略」がパートナー間暴力を促進するということは、以下のように考えると理解しやすい。「性急な生活史戦略」を採用する個体は繁殖のための努力、特に配偶者獲得の努力にエネルギーを費やし、より多くの相手と短期間の性的関係を持つことが知られている。パートナーの片方或いは両方が性急な生活史戦略を採用する個体であった場合、不貞を行う可能性が小さくない。そうしたパートナー感で関係を維持しようとするならば、パートナー関係維持行動の中の特に強力で支配的な方法、すなわち暴力に頼ることが有効である場面が多くなる。
■産業界において「心理的安全性」という概念が注目されている。
そのきっかけはGoogle社が2012年から約4年かけて行った、職場のチームの生産性を高める条件についての調査報告であった。「プロジェクト・アリストテレス」と名付けられた調査プロジェクトによりGoogle社のリサーチチームが導いた結論は、「効果的なチームは協力体制が優れている。チームの協力体制において特に重要なのは、心理的安全性であり心理的安全性が高いチームは離職率が低く、収益性が高い」というもの。
■心理的安全性とは、ハーバード・ビジネススクールで組織行動学を研究するエイミー・エドモンドソン教授が提唱した概念で、チーム内で率直に自分の意見を述べても他のメンバから拒絶されたり攻撃されたりすることがなく、対人関係の悪化の心配はないという信念が共有されている状態のこと。メンバーの潜在意識に働きかけ、メンバーの判断や行動に影響を及ぼすとされている。ただい、必ずしも快適で居心地の良い集団の常態を意味するものではないという点に注意が必要。
Posted by ブクログ
―――あらすじ―――
ヒトの心理や行動は進化的適応の産物であり、それには偏りやバイアスが存在する。
それを善悪で評価するのではなく、進化的に意味のあるものとして捉えることの重要性を、人間行動進化学の基礎的な内容に加え、宗教やLGBT、医療や教育、経済といった現代社会の問題解決や課題に焦点を当て、簡潔にまとめられた良書
―――レビューの流れ―――
-進化とその仕組み
-進化の観点からヒトを研究する「人間行動進化学」
-進化の意味を誤解した「自然主義の誤謬」
-進化の産物であるバイアスを活かす「行動経済学」
-まとめ
―――――――――――――
―――進化とは―――
進化=祖先から受け継いだ形質が変化すること
※良い状態へ変化する「進歩」とは異なる点に注意
※なお本書の題名にある進化は生物学的な「進化」と一般的に使われる「進化(進歩)」の二つの意味が込められている
―――生物が進化する仕組み―――
「自然選択の理論」=集団中の1個体に生じた突然変異が集団全体に広まるメカニズム
例)エスパニョーラ島の鞍型の甲羅を持つゾウガメ
①甲羅の形状は個体によって異なっている(個体変異)
②甲羅の形状の違いは遺伝子の影響を受けるため、鞍型の甲羅の親からは鞍型の子が生まれる傾向がある(遺伝性)
③低木やサボテンなどを主な餌とする島では、鞍型の甲羅(前方が上方に反り返っている)の個体は容易に餌を食べることができ、他の形状の甲羅を持つ個体よりも生存率が高くなり、多くの子孫を残す(適応度の個体差)
「適応度」=次世代に残す子供の数の期待値
適応度=生存率×繁殖率
→生物は「適応度」を高めるのに有利な形質が残っていく
―――人間行動進化学―――
人間行動進化学=心も進化によって形成されたという前提に基づいて、ヒトの心理を研究。
エドワード・ウィルソン
『社会生物学』:動物の行動は群選択の理論よりも、遺伝子に働く自然選択の理論によって適切に説明される。
=ヒトも生物の一種であり、他の生物と同様に進化の産物である
例)配偶者選択:交配相手の選択において、相手をランダムに選んでいるのではなく、特定の性質を持った相手を選ぶ傾向がある(=配偶子のサイズが雌雄間によって異なることが、配偶者を選ぶことにおいて雌雄間の利害関係の違いを生む)
・人間行動生態学
・進化心理学
二つの学派が存在
―――自然主義の誤謬―――
「自然である」と「自然だからそうすべきである」という価値観の間には必然性はない
例)「男が浮気をするのは、ヒトの繁殖戦略とから考えて自然である」
→「では、男は浮気をしてもよいとうことか!」という不毛な論争を招くことに
=自然主義の誤謬
「社会進化論」イギリスの哲学者 スペンサー:社会は1つの有機体であり、生物と同じように社会も自然選択によって進化(進歩)する
…スペンサーは進化を「進歩」と捉えてしまった
→「優生学」イギリスの人類学者 フランシス・ゴールトン:遺伝構造を改良して人類の進歩を促進しようという考え
=遺伝的に優れた人間同士の繁殖を促進することで、
優れた人間だけが生き残り、社会が進歩する
→ナチスの人種政策の温床に
「劣った個体は淘汰されるのが自然である。自然であるということはそれが正しいということである。」=自然主義の誤謬の例
―――現代生物学≠遺伝決定論―――
…ヒトのあらゆる性質には遺伝と環境の双方が影響する。
特定の性質が高い適応を示すのは、特定の環境においてそうであるというだけ
=ヒトには進化的適応の産物として、特定の傾向やバイアスが存在する。
それらはある環境において進化的に意味のあるモノだから残ったのであって、
それは絶対的に善や悪で判断できるものではない
→現代社会とミスマッチを起こしている、進化の産物に焦点を当てていくことが必要
―――行動経済学―――
従来の経済学…完全に合理的な人間が存在するという前提
→ヒトは特定の傾向やバイアスを持っているではないか
→「行動経済学」…ヒトの進化的適応によって得た特定の傾向やバイアスを踏まえ、
進化の観点から仮説検証をすることで社会問題や課題解決に応用していく
「リチャード・セイラ―の3つの行動バイアス」
「近視眼性」:目先の利益を優先してしまう傾向 (例:双曲割引)
「限定合理性」:ヒトの意思決定は知識と認知能力の限界のため、完全に合理的であることはできないという概念
(例:メンタルアカウンティング)
「社会的選好」:ヒトは意思決定において、自分の利益のみを動機とするのではなく、他者の利益や行動も考慮する
(例:最後通牒ゲーム…不平等回避)
「脳機能からわかるヒトの意思決定の例」
規則を守らないヒトがいると腹立つが、そいつがボコられると快感である
不公平な提案をされたときに活性化する部位
・前頭皮質の両側
・前帯状皮質
・背外側前頭前皮質の両側
不平等回避によって活性化する部位
・線条体(=報酬系)
―――行動バイアスはなぜあるのか―――
…特定の環境において、適応的であったから(進化に有利であったから)
例)ヒトがほとんどの時間を過ごした狩猟採集生活において
(ヒトの進化は基本狩猟採集生活に適応している)
「近視眼性」:食料は保存することができないため、すぐに食べるほうが適応的
=将来手に入るかわからないものよりも、
すぐに手に入るものに高い価値を感じるほうが有利
「限定合理性」:貨幣のない時代に余った衣類を食料に回すということができなかった。
そのような生活において、「家計簿」を衣類部門、食べ物部門のように独立した項目として考えたほうが有利だった
「社会的選好」:集団内の個々人は互いに顔見知りだったため、「互いに協力しようとする心理」と「協力しないやつを非難する心理」を併せ持つ個体が、最も大きな利益を得た
―――同性愛遺伝子はなぜ消失しないのか―――
適応度=次世代に子孫を残せる数の期待値
↑を考えると、繁殖の力をほとんど失う同性愛は適応度が低く、生き残れないのではないか
→しかし、同性愛者は一定数存在し続けている
=同性愛遺伝子も進化的適応の産物である=進化的に有利に働く理由がある
・仮説⑴ゲイの伯父仮説
=自分で子を作らなくとも、血縁者の子育てをよく手助けすることで、
結果的に血縁者の子孫の形で遺伝子が集団何残りやすいという考え方。(働きバチなどもそう)
・仮説⑵血縁者にゲイがいる女性、他の女性より男が好き説
=性的パートナーとして男性を好む遺伝子が存在し、
その遺伝子を持つ人が女性であれば男性との性行動を活発に行い、多くの子供を持つ結果になる。
男性にその遺伝子があった場合の繁殖率の低下を補えるほど。
―――まとめ―――
本書では、その他医療や教育、人工知能など現代社会におけるトレンドに幅広く言及している。
共通することは、
1.ヒトの心理や行動には進化的適応の結果としての偏りやバイアスがある
2.それらが良いか悪いかは環境によって相対的に変わる
3.進化的適応の産物であるバイアスは、意味のあるモノだから残っているため、
それらをなくすのは困難なため、バイアスを活かすあるいは機能させないような
行動デザインを考えることが求められる
Posted by ブクログ
進化心理学をベースにしたエッセイ。
中でも印象的だったのは、うつ病は、防衛反応ではないか?という仮説である。この背景として、ランク理論と呼ばれるものがあるとのこと。
以下、引用。
>ここでのランクとは群れの中での順位など社会的地位のことを意味します。ランク理論では、うつ状態は社会的地位(ランク) を失ったもののそれを奪い返す可能性がない場合に生じる防御反応であると考えます。
もしこの仮説が正しいとすれば、競争から離れることがうつ病を治すことに役立つのでは?という考えになる。
>敗者が自身の敗北を素直に認めて受け入れた場合にはうつ状態は消えるという仮説です。なぜなら、すでに闘争する意欲をなくし、大きな被害を受ける危険のない敗者にとっては、うつ状態になる利点が存在しないためです。
これはかなり自分の中で腑に落ちるなと感じた。私の周りにうつ病と診断された方がおり、特にその方は自分の中の序列、ランクを常に気にしている人であった。
ある日、何かがきっかけでその競争に参加できなくなったり、転落することを受け入れられなくなると、防衛反応としてうつ病になるのかもしれない。(真偽は定かでないものの)