セゼールはカリブ海の小アンティル諸島のひとつマルティニック島の出身。
マルティニックにおいては、黒人奴隷が生み出したクレオール文化は野蛮であり、「文明の言語」であるフランス語を話し、フランスの文化を身につけることによってのみ、黒人は「人間」になることができる、という信念が植え付けられていた。
そうしたなかで、セゼールは帰郷ノートによって、ネグリチュード(黒人性)というアイデンティティを打ち出し、その後花開くクレオール文学の端緒を開いた。
セゼールは白人への「同化」を拒否し、アフリカに根を持つ「自分自身」を自覚した。