韓国ソウル、90年生まれ、生命科学を専門とする若手ドクターの日常。研究奴隷と自嘲する夜中まで研究室に篭る日々。穏やかな語り口で綴られるエッセイ。韓国の日常、研究室の現場、生命科学の面白さなど、様々な発見がある読書。
研究室でよく使われるハツカネズミの寿命は普通3年。例えば、老化と言う生命現象を研究
...続きを読むするのに、ハツカネズミを観察し、論文を書くのに3年要することになる。しかし線虫であるC.エレガンスの寿命は2週間。著者は、このC.エレガンスを仕事道具にしている。仕事道具と言っても生命だ。倫理教育を受けてから臨む。最近では、脊椎動物で寿命が6ヶ月であるキリフィッシュを用いる研究も進んでいる。こうした実験用の生物の選定、管理も研究室での重要な仕事だ。夜中にお酒の席を抜け出して餌やりをすることもあるらしい。他にも、オルガノイドという人工の身体器官の話など、生命科学の話を分かりやすく楽しめる。
自らを研究奴隷と自嘲する作者。大学院生時代共に暮らしていた2人の友人、この友人たちも夜の帰りは遅く、奴隷1号、奴隷2号とお互い呼び合っていたようだ。韓国のというよりも、研究室のリアルが感じられる。大変な労働環境という気もするが、大事な研究だし、そこに対するやり甲斐も伝わる。ブラックとは何か、改めて考えさせられた。