坂本美雨の作品一覧
「坂本美雨」の「ただ、一緒に生きている」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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ビジネス・実用
Posted by ブクログ
まるで陽だまりみたいなひと。
長女のなまこちゃん(もちろんあだ名)の成長記録を連載したものだが、美雨さんがお母さんになっていく過程も丁寧に綴られている。(「東京すくすく」というサイトで今も連載中)
ご存知の方もいらっしゃると思うが、坂本美雨さんは歌手で作曲家 坂本龍一氏の長女。そのため巻頭の写真ページには、なまこちゃんを抱っこする龍一氏も登場する。
常に厳しい表情をされている印象だが、この時ばかりは美雨さんみたいに柔和な微笑みをたたえたおじいちゃんだった。
「より密度が濃い子供の世界で、娘はなにを確かなものとして生きているんだろう」(P 57)
美雨さんはシンガーソングライターでもあるから、言葉選びがとても秀逸。詩的なのに表現一つひとつが自分の中にスッと溶け込んでいく。
ちょうど落ち込んだ時に音楽を聴くと、その歌詞がいつも以上に刺さっていくみたいな。
「愛猫と同じくらいに人間の子を愛せるだろうか」と不安がっていた美雨さんも、年を追うごとに段々お母さんの眼差しになっていくのが見てとれる。果ては、よその子の成長ぶりにウルッときちゃったり、児童虐待防止団体を立ち上げたりと、世の中の子供全員に関心が向けられている。
それでも悩み・戸惑いは尽きないだろうが、これからもなまこちゃんと一緒に生きながら、それらと都度対峙していくのだろう。
我が子の喜怒哀楽を自分ごとのように受け止めつつ(子供にとっての悲しい出来事に、一緒に泣いてあげられるのがこの方の素晴らしいところ)、一人の人間同士お互いの人生を歩む…。そうしたバランスともどのように対峙していくのか、今後も目が離せない。
産後の早いうちから歌手活動を再開されたので、なまこちゃんも赤ん坊の頃から現場に同伴することがあったそう。もちろんコンサートを観に来ることもあって、本番前にダリアの花をプレゼントする話は象徴的である。
なまこちゃんが「いつものお母さんと違う…きれい…」って不思議に思う気持ち、よく分かる。自分も幼少期、母がいつもと違うドレスアップをしていると、まるで違う女性みたいに思えてきて、一種の憧れすら抱いたもん。
普段はクールでちょっぴりオトコマエな彼女も、やっぱりお母さんが一番誇らしいんだね。
「娘は、どこで暮らしていくんだろう。空から見た、どこにも線なんか引いてない世界で生きていってほしい」(P 196)
なまこちゃんは、美雨さんが35歳の時に生まれた。なまこちゃんが35歳になると、美雨さんは70歳。なまこちゃんがもっと歳をとると美雨さんは…と、嘆かれる話は心が痛かった。
「もっと一緒にいたい」「我が子がおばあちゃんでいる姿を見たい」という言葉を裏づけるかのように、美雨さんは日々「大好き」を伝え、なまこちゃんもそれに呼応している。
美雨さんの優しさや小さきものへの慈しみに触れ、読みはじめからこわばっていた心がほぐれていった。
いつか自分が人の親になって自信を失った時には、本書を読み返したい。(きっと今よりずっと違う感想が浮かぶんだろうな…)そしてあたたかい言葉一つひとつからなでなでしてもらうつもりで、子供みたいに甘えたい。