本書の対象は駆け出しのプロを想定しているが、とても読みやすかった
はじめに
動画編集にはルールがある
Chapter 1 編集と文法
編集とは、切ってつなぐだけ(肉体)、カットの順番と長さを決める(頭脳)
編集の目的、1.時間を詰める(整理整頓する)2.ストーリー(心情を含む)をつづる
「編集ができる」とは、映像でストーリーをつづることができるということ
究極の目的は視聴者を退屈させないこと
ありがちなのは子供のビデオ
動画の大基本、主→動作→対象
動作はその前にある人物がその主になる
映像は写っているものがすべて。逆にいえば、写っているものにはすべて意味が出てしまう
現実的な基本形、主+動作→対象 順番を変える場合は、主・対象がはっきりわかるような描写が必要
受け身、対象→主+動作→対象 受け身にするときは対象が主人公であることを先に宣言する
アップの次のカットは主観になる
※動画における超有名なルールの1つ
なにかを見ているカットの次には必ず対象物が来るが、それが本人が写り込んでいない画ならば自動的に主観になる(主観にしなくない場合は本人が写っているといった絶対に主観になり得ない画にする)
基本動作の発展系、動作の主(男)+動作(発見)→動作の対象(食事)→リアクション(よだれ)
クレショフ効果とは、編集されていることで、演技をしていない役者が演技をしていたと視聴者が思い込んでしまう効果のこと
もう見えていない表情を記憶の中でもっとも効果的にする働きのこと
そのシーンの主人公にしか発動しない
鉄則、ヒキで始まり、ヒキで終わる
環境・状況を説明→事件が起き変化が起きる→変化の結果の状況を見せる
状況とは「いつ、どこで、だれが、どういう位置にいて、どっちを向いているか、なにをしているか」
基本形、動作の主が先
基本技、アクション先(動作を先にする技)
Chapter 2 コラージュとモンタージュ
この本の最重要項目、理解するだけでいい
つながっていないつなぎ方(コラージュ編集)
コラージュとは異質なものを並べること。
特にその違和感を楽しむ合成・合体のこと
コラージュ編集とは前のカットと関係性を持たない画をつなぐこと=同じシーンには見えない画を選んでつなぐこと=シーンとシーンをつなぐときに(場面転換)に用いる
禁止事項、前のカットとつながっているように見えてはいけない
特徴、1.時間・空間・状況がつながっていない→順番を自由に入れ替えられる
2.新たなストーリーを描き出すことができない→コラージュ編集だけだと30秒程度までしか持たない
紙芝居編集とはコラージュ編集の一種で、言葉でつづったストーリーにさし絵を付けるというコンセプトの編集(例:ニュース映像)
つながっているつなぎ方(モンタージュ編集)
モンタージュの定義(カッコ内は映像世界での定義)とは複数の異質なもの(カット)を1つのなにか(シーン)になるようにくっつけること
モンタージュとは(元来の意味)違和感なく一体化すること、(映像の世界)複数のカットをつないで1つのシーンにすること=シーンをカット割りして映画を作る手法のこと=1シーン1カットではないということ
まずモンタージュ編集とは前のカットと同じシーンとして違和感のないカットを選んでつなぐこと=シーンの中でのつなぎ方
特徴はストーリーを描き出すことができる→ストーリーをつづるための編集法→順番が大事、入れ替えることはできない→時間・空間・状況がつながっているように見える
注意事項は違和感がないこと、これらがすべて
モンタージュ編集のやり方
5つの条件
「先のカットの最後のフレーム」と「次のカットの最初のフレーム」で次の5つが保存される
1.時間軸
2.空間
3.登場人/物
4.アクション
5.イマジナリー・ライン
この5つのポイントが一致した画をつなげば、それは必ずモンタージュ編集として成立する
モンタージュとコラージュの使い分け
コラージュとモンタージュの境目とは筋道・関連性が読み取れるかどうか
Chapter3 ストーリーをつづるために
ストーリー
ストーリーとは「最初の状況」(なにが)→「事件(動作)で変化が起こる」(どうして)→「変化後の状況」(どうなった)
見せたいストーリーの直前、事件が始まるところから始めて、結果を見せて終わる
最初に「終わったような画」を持ってこない
最後に「始まるような画」を持ってこない
ストーリーをつなぐ「モンタージュ編集」
「どんな風に(一瞬の様子)」をつなぐ「コラージュ編集」
主人公の紹介
先に紹介された人物が主人公→後から出てくる主人公は手を焼かす
役の重要度によって見せ方が変わる
シーンの内訳
コア・カットとはストーリーをつづるのに必要な、そのシーンでの核となるカット、文法に支配されているので、順番を入れ替えると話が違ってしまう
装飾的カットとは周りの状況カット:その時点での周囲の状況を表すカット、代理カット:コア・カットの一部に代用として使われるカット
カット割りとは見せたいタイミングで見せたいものを見せる。つまりカット割りと編集は同じこと、ただし、編集では感情表現ができるが、カット割りではできない
カットの順番を変えるワケ
印象に残したいカットは後ろへ持っていく
伏線はしっかり印象付ける
印象付けの度合いをコントロールするカットを意識する
カットの長さの決め方
カットの長さは認識度と価値で決まる
(上級)モンタージュ編集はカットの価値を高めることができる
編集=写っていないものを表現する=演出
Chapter4 カメラの都合
イマジナリー・ライン
イマジナリー・ラインとは同じシーン内で被写体の向きを管理するための線(縦の面)
従来とは被写体同士を結ぶ架空の線(面)
アドバンス(AIL)とは被写体が方向性のある動作をしている場合にその方向に沿って設定された線、AILとは、必ず従来のイマジナリーでラインのどれかと一致していなければならない(外したい場合には、別の対象との間に新たなイマジナリー・ラインを結びそれと一致させる)=方向性のある動作は必ずイマジナリー・ラインに沿って行われる=対象は必ずイマジナリー・ライン上にいる=目線ビームは必ず対象に当たっている(視線とメイン動作の対象が同じ場合)
破り方はライン上からのショットを入れる、ヒキ画で設定し直すことができる=ヒキで破ればたぶん大丈夫
サイズ、アングル、リズム、テンポ?
サイズ・アングルは役割を満たすことが最優先
その範囲内でアクセントやリズムなどを考えるのも一興
パンやピン送りではフィックスで入り、一呼吸で動き出し、止まって一呼吸でアウト
画面に向かって左がシモテ、右がカミテ
動画はなんでも「左から右」
サイズの役割
ドン引き、ヒキ、フル・ショット、ニー・ショット、ウエスト・ショット(もっともよく使われる通常のサイズ)、バスト・ショット、ドアップ、クローズアップ
アングルの役割
パン、ティルト、フィックス、ドリー(カメラを台車に乗せていること)、俯瞰、鳥瞰、アオリ(自撮りで使うと最悪、ひたすらブサイクに写る)
Chapter5 編集の禁止事項 やってはいけない編集とその回避の仕方
ジャンプ・カットとその回避法
ジャンプ・カットとは時間が不自然に飛んでいる、もしくは動作を切り替えるところが写されていないこと
回避法は、動画は動作を写すものなのだから、動作を切り替えるところは端折れないということを頭に刻み付ける、時間が飛ぶことに関しては、程度と加減をわきまえる
どうしても動作を切り替えるところを見せたくない場合は、①代替描写:別のもので描写する②フレーム・イン:カラ画で動作をリセットしてしまう
ジャンプ・カットとは、「尺を詰めようとして、一部を切り落としたんだけど、落としちゃいけないところを落としちゃった」ということですよね。だから、本当のジャンプ・カットの回避法は、どこは落とせるのか、どこは落とせないのかをしっかりとわかるようになる、と言うことです。そのためには、シーンの構造と画の意味と言うものをきちんと把握できるようになりましょう。それがジャンプ・カットの究極の回避法です。
同ポジ
同ポジとは同じ構図のカットが連続すること、NGではないが、ヘタに見えるので避けるのが基本、対比で見せるなど、狙いがあるときには許される、特にコラージュ編集ではマッチ・カットとしてよく使われる
ダメ・絶対
人道上やってはいけないこと
サブリミナルとは通常知覚できない方法で潜在意識に働きかけること、特にカット目に1フレないし数フレ、別の画を入れること
画残りとは意図せずサブリミナルになってしまった編集ミスのこと
モニター画面に素手で触る・指紋を付けることは死刑!
Chapter6 基本を超えた編集技法
省略法
現代のみ「いつ」を省略できる
「状況説明」を省略できる
条件①伝えるべき相手が「お約束」でわかってくれている場合②設定も必要なく、視聴者も説明を求めたくならない場合
動画は放っておくとたくさんの"余計なこと"が伝わってしまうから、伝えたい情報を絞り込み、それ以外の情報には蓋をする、どれだけ伝えないかがプロの技
倒置法
倒置法とは基本の順序と逆にする手法
基本技は状況説明を後回しにする(基本構文の倒置法)
動作の主と動作を逆にする(アクション先:基本文法の倒置法)
逆にしたことに正しい狙いがあるときしか使ってはいけません
マッチ・カット
マッチ・カットとはエヅラか音か動作をマッチ(一致)させることで違和感を与え、シーンが変わったことを強調するオシャレ技
コラージュ編集でしか成立しない
前後のシーンがシーンとして成立していないとただの同ポジになる→番組系動画でしか、まず使われない
ラップ
1つのカットの中で一部分を何度か繰り返す編集法
フラッシュ・バックとコンフリクト・モンタージュ
フラッシュ・バックとはピカッと一瞬だけ過去の映像を入れる手法
コンフリクト・モンタージュとは
あるシーンに、まったく脈絡も関係もないイメージ映像を放り込むこと
Chapter7 動画の種類と特性
覚える必要は無いが間違えると大変なので都度この本で確認して欲しい
Chapter8 言葉について
動画で使うべき日本語
ら抜き言葉の回避法は、動詞が五段活用の場合には「ら」を省略できる
「さん」は個人名にしか付けない、しかし個人名でも以下の3つは付けない、①身内②芸名③死んだ人
「さま」、「様」と謙譲語は基本的に使うべきではない
音便、鼻濁音を使う
テロップについて
人間は一度に一つのことしか認識できない
しかたなく出さなければならないテロップとは、権利表記、固有名詞、よく聞き取れないコメント、「画を見て欲しくない」ときに目を逸らす為
黙読で3回読める時間
できるだけ目立たない隅に、人に被らないように
フォントは著作物なので、使うときは必ず著作権を確認
Chapter9 動画の周辺知識
音の編集
4チャンネル以上の動画専用レコーダーで音声をとる
カット目は必ず丸めるかクロス・フェードにしておくこと
4chのうち使うのは1・2ch
3・4chには音楽のLchとRchをあてがう
ピン・マイクやガン・マイクの音は真ん中から聞こえるように、書き出しのときにそれをL・Rの両方に同じ音量で出力、環境音(オフ・マイクの音)は使わなくても良いが、メイン・マイクの音に薄く混ぜてやるとリバーブが付いて臨場感が出るのでお好みで
CDや音楽系のwavファイルなどを動画に貼り付けたらノーマライズ(音量を-20dbに下げる)すること
インターネット動画を作る方は、必ず音を-20dbでノーマライズすること
カラー・グレーディングについて
カラコレは色修正、カラグレは色を変える・かぶせる
カラグレよりも先に照明の勉強が先
プロの照明さんは凄い、プロの写真家は光を作るのがうまい
カラグレしたいならカメラはできるだけニュートラルにとる
アメリカ人の懐かしい色というのはコダックの大昔のフィルムの色で日本人の懐かしい色というのは富士フイルムの「ベルビア50」というフィルムの色
人間の50%は3色見えるが、25%は2色しか見えず残り25%は4色見えるのでネットでテストして確認しておく(色識別能力)
動画の中の世界に合わせた自然な=普通の色にする
動画制作のワークフロー
1.企画、だれに、なにを、どう伝えるのか、2.構成表、ここでクライアントとやり取りで10分番組でも15回ぐらいは書き直す、完璧に紙の上で番組を作る、3.コンテ、ここまでがディレクターの本業、4.ロケハン、5.撮影、照明と三脚は必須、6.編集作業、7.特殊効果、8.仕上げ(MA)