本書は、一見自明に思えるボランティアという行為の本質を、「自発性」「無償性」「公共性」という3つの切り口から探求した、ユニークな一冊です。
著者は、ボランティアについて真面目に考えすぎず、ゆるく非真面目なアプローチを取ることで、読者の心に寄り添いながら、ボランティアの奥深さと面白さを伝えています。
...続きを読む
ボランティアを始めたい人、長く続けてきたけれど疲れを感じている人、さらにはボランティアに全く興味がない人をも対象に、ボランティアの意義や魅力を平易に解き明かしている点が本書の大きな特長です。
「自発性」の章では、自らの意思でボランティアを始めることの重要性を説きつつ、周囲の期待に応えるためについやってしまう「他発的ボランティア」の罠についても指摘しています。
「無償性」の章では、金銭的な見返りを求めないことがボランティアの基本である一方で、「無償だからこそ得られるもの」があることを説得力を持って論じています。
「公共性」の章では、ボランティアが社会の「公」を支える営みであることを再確認しつつ、「私」的な動機との両立の難しさについても触れています。
各章の議論は、著者の経験に基づく具体的なエピソードを交えながら展開されており、読者はボランティアの現場の臨場感を味わいながら、その本質について考えを深められます。
一方で、議論の展開がやや散漫になる場面もあり、ボランティアについてのより体系的な理解を求める読者には物足りなさを感じさせるかもしれません。
しかし、ボランティアの意義や面白さを、ゆるく非真面目に伝えるという本書の目的は十分に達成されていると言えるでしょう。ボランティアを多角的に考えるための入門書として、一読の価値は十分にあります。