化石燃料から再生可能エネルギーへの転換は、産業革命に匹敵する変化をもたらす――。ゼロカーボンの基礎から、新たな経済競争まで、脱炭素を巡る世界の動きを解説する書籍。
2020年の国連総会で、習近平国家主席は中国がカーボンニュートラルの実現を目指すことを宣言、世界が脱炭素に向かうことを決定づけた。欧米
...続きを読む諸国は、この宣言によって「中国が世界の方針を決めた」ことに強い警戒心を抱いている。
大気中の二酸化炭素(CO2)には、地球の気温を上げる「温室効果」があり、その上昇を止めるためには、CO2の排出量を実質ゼロにする必要がある。「ゼロカーボン」とは、森林などによるCO2の吸収量(4%)を除いた「96%のCO2の排出を止める」ことである。
ゼロカーボン化の原則は、次の3つである。
①再エネ・原子力発電を拡大して火力発電を漸減する
②電化によって化石燃料を使わないようにする
③電化で解決できないものは技術革新を進める
中国は、ゼロカーボンによるエネルギー転換の中核を支配しつつある。世界最高のコスト競争力と世界最大の国内市場を背景に、太陽光発電や風力発電において、世界の市場を席巻している。
ゼロカーボン化において、米国は中国に大きく後れをとる。その最大の理由は、政権交代にある。石油業界との結びつきが強い共和党が政権を握ると、前政権のエネルギー政策が継承されず、結果的に中国の優位性を高めることになった。
米国の強みは民間企業にある。例えば、GAFAなどは使用電力を再エネ100%にする国際イニシアティブ「RE100」に加盟し、ゼロカーボン化への取り組みを加速させている