「学芸員さんの細かすぎる日常」と副題にある通り、滅多にフォーカスが当たらない(というか、初めて当たる)博物館学芸員の日常漫画である。博物館フェチの私には無視できなかった。Twitterで見つけて、次の日には衝動買いをした。いわゆる学芸員資格試験志望者には、イメージ湧きやすい入門書になるのかな、と予測
...続きを読むを立てて買ったところ、甘かったです。学芸員て、発掘して、図面書いて、企画展考えて、説明版書いて展示するだけじゃないんだ。漫画棚ではなく、専門書棚に置いてあったのも宜なるかな。
ホントは、考古学博物館の日常が見たかったんだけど、著者の実体験に基づいているために、今回は郷土博物館の、しかも廃校を利用した収蔵庫の資料整理の仕事がメインなのである。よって殆どが民俗資料である(←博物館の中だけでなく、他所に収蔵庫を作っていることを初めて知った)。私なんか信州鎌の錆落とし保存作業なんて、つい数十年前のものだから簡単に思っていたけれども、まぁ細かい!用具だけでも、ハケ・筆入れ、ステンシルブラシ(100円ショップ)、平筆(100円ショップ)、ハケ(大・中・小)(100円ショップ)、椿油、キッチンペーパー(100円ショップ)と説明する。100ショップで大丈夫という情報は、教科書には載らないだろう。
博物館だから、当然虫除けの作業はする(←当然とは私は思っていなかった)。ところが、「文化財防御」はそれだけでは済まないのである。どんな虫がいるのか「同定」して(捕まえる。当然クロゴキブリや穀蔵虫、シロアリも)対応する。木の種類によって、虫の種類が違う。脱皮殻で毛髪を食べる虫を同定する。うーむ深い、そんなことまで調べないと、資料収集・保存はできないのか?
その他いろいろ細かすぎることを書いている。もはや教科書の範囲を超えて、やや知的ギャグになっていて、著者もそのあたりを狙って描いている気がする。
それと、1/3を使って、「学芸員あるあるホラー話」を載せている。何しろ、暗いところで昔のものに囲まれて仕事するのである。お地蔵さんを寄贈されたら、普通に「魂抜き」(お性根抜き、閉眼供養ともいう)をしているらしい。それでも、盛り塩がいつの間にか減っていたり、お地蔵さんから念仏の声が聞こえたり、と著者が実際学芸員さんから聞いたホントの「話」を描いている。学芸員さんにとっては特別なことではなく、怖がってもいないらしいのですが、そういう描き方だからこそ、ちょっと怖かった。
その他、企画展示準備のあれこれも描いている。
クイズです。企画展ではしばしば「展示替え」があるけれども、展示しきれないからだと思っていたが、ホントの目的は違うようだ。さて、どうしてでしょう?
(答え コメント欄に)