創業者のポニー・マーが書いた本のため、どうしても主観としての主張が多い内容になってしまった。
第三者がテンセントをどう評価しているのか。
今までのインターネット企業と、どの部分が一線を画しているのか。
そういう点を知りたければ、正直言って物足りなさを感じるだろうと思う。
テンセントならではの独自の戦
...続きを読む略。
今までの企業と何が違うのか。それらをもっと盛り込んでほしかった点だ。
BATHと言われ、GAFAと比較されるが、GAFAと同じ戦略を中国内で行っているだけであれば、オリジナリティがない。
あくまでもタイムマシン経営でしかない。
ポニー・マーが何を考えて、これからどうしていくのか。
もう一方の巨人アリババのジャック・マーは、中国共産党との確執が言われている。
同じ轍を踏まないように、ポニー・マーは慎重に事を進めているということか。
書籍の内容を読むと、突っ込んだ主張がない。
表面的な「テクノロジーの発展」を、言葉を変えて言っているだけで、「なぜ、何のために」というビジョンについての記載がない。
そこは結局「中国共産党の仰せの通りにいたします」ということか。
アリババはもしかしたら正しいことをしようとして、結果失墜することになってしまったのかもしれない。
いずれにしてもアリババの失墜は、テンセントの一強にもなりかねない。
そしてアリババを反面教師として、テンセントはより中国共産党と一体化を目指していくだろう。
それが世界の秩序にどう影響をしていくのか。
テンセントの動きが中国の今後の国際社会での動きと連動していくことは確かだろう。
中国国内の事業については、それはそれで国際社会への影響は軽微と思われる。
ゲームにしても、SNSにしても中国内の閉じた世界であれば、日本やアメリカへの影響は少ないからだ。
一方で金融分野については話が別だ。
中国は世界の基軸通貨を人民元にしたいと目論んでいる。
世界征服への戦略の一つが、まさに基軸通貨を奪取することだからだ。
デジタル人民元の話もあるが、技術的にはテンセントほどの力があれば決して不可能ではないだろう。
これからは益々混迷の時代だ。
世界がどう変化していくのか。今の状態では、日本が世界の中心になることは考えられないが、それではどういうポジション(位置取り)をしていくべきなのか。
ここは非常に難しいところだ。
絶対と言える最高権力が機能していれば、そこに頼ることもできるが、その最高権力が正義を貫いてくれるとは限らない。
世界はすべてバランスで動いている。
とにかくしたたかに動くしかない。
改めて本書を読んで、日本の立ち位置。個人の生き方まで混迷を極めていると思ってしまった。
いずれにしてもこういう時代を上手に生きていくしかないのだ。
日々勉強をしていくしかないのだ。
(2021/8/2)