本書は、政府の新型コロナ対応を冷静に観察、分析し、現実的な視点から評価と批判を行ったうえでの将来に向けた政策提言書である。
本書の中で、政府の対応を失敗とも成功とも言えないとしていることは、まさしくその通りである。
経験のない中でのパンデミックに対する対応において、ベストプラクティスを実行することは
...続きを読むできない。危機は同じように発生しないし、状況は日々刻刻変化する。
対応が「場当たり的」になるのもやむを得ない。
だからと言って、何も準備をする必要がないわけではない。
情報共有や伝達方法の不備など、今後基本的部分で改善していかなければならない部分は多々ある。
特に、特別給付金支給場面での混乱などを見るとコロナ禍を奇貨として、日本においてデジタルトランスフォーメーションの推進は必須であると感じた。
緊急出版ということで、内容の重複などが見受けられるが、パンデミックに限らず、今後の危機管理の指針となる報告書である。
余談であるが、多くの新聞が、この本の紹介記事の見出しに、本文の中で一か所しか出てこない「場当たり的判断の積み重ね」という表現を使用している。
このことは、「ロックダウン」という言葉が、緊急事態宣言の内容を国民に誤解させとように、読者に対してこの本が、政府のコロナ対策の批判書との印象を与え、読者をミスリーディングしているように感じた。