デジタル時代における競争環境の変化を前提として、それに対応すべく、組織や人材のあり方など、日本企業にとっての総合的な経営課題についての論文が30本掲載されている。今回のコロナが今後の経済や社会のありかたをどう変えていくかというヒントになるかと思い手にとってみた。
2018年の出版ですでに2年が経過
...続きを読むしているが、出版時点でも既に過去のものと認識されていたはずの伊藤ハムのハム係長の事例など、すでに古さを感じる内容も含まれている。書中、デジタル時代の環境変化の速さとそれに対する組織や意思決定のスピード感がなんども強調されているだけに残念である。
全ての章において一貫してるのは、時代の変化に対応して変わるべき日本企業の大多数が過去の制度やオペレーションを維持しつづけ、そのために競争力を失ってきている事への危惧がある。特に人材や組織の運用、変化に適応できる企業文化の醸造などにおいては、先進的なIT企業やベンチャー企業での事例が多く紹介されているが、おそらく大手を中心とした旧来型の日本企業では、そうした問題やニーズは寺社には存在していないという認識なのであろう。
また、企業サイドだけではなく、いわゆるメンバーシップ型の雇用慣行に慣れきっている労働者サイドにも危機意識は向けられている。安定をどう定義するかという問題において、働いている企業が業績や財務において安定しているという「安定的なものの中にいる安定」な安定と、自分自身のスキルが高くどこにいっても通用するという「変化する環境に自分が適応できる安定」分けられるというが、当然、多くのサラリーマンは前者を当たり前と思いそれを選好する。しかし、それは安定を他人に委ねるという、主体性がなく危険性を孕んだモデルでもあるといえる。すでに、終身雇用は崩壊しグローバル競争と変化のスピードアップによって企業もその余裕はなくなっている。すでに内的な安定が重要であるという世界に向かっているのは明白であるが、あいかわらず会社に安定を求める傾向は、新卒の就活生においても同様であるという。