コロナ禍でいろいろな記事を読んでいる時に、とても興味深いインタビューを読んだ。
作家・辻 仁成さんと、歌舞伎町ホストの手塚マキさん。
「夜の街」と「歌舞伎町」はコロナのエピセンターとして、あちこちから叩かれていた場所。
でも実際のところはどうなんだろうととても気になっていて、
この記事には、現在の歌
...続きを読む舞伎町がやっているさまざまな対策や取り組みのことが語られていた。
帯ニュースがどれだけイメージで夜の街を語り、
世間の偏見におもねるような方向で報道しているのかとげんなりする。
その中で、この本の存在を知って、がぜん興味が。
コロナの感染が始まるより前から、手塚氏はホストを集めて歌会をやっていたらしい。
(その前に、掃除ボランティアという活動もあるとか)
長い文章は書けなくても三十一文字程度なら表現できる。
もともと親和性のある和歌と色恋。
詠み手のキャラクターが垣間見える多様な歌が並んでいて面白かった。
ビッグになろう系のちょっと古臭いのがまだいるんだなあー、とか
客商売ながら本気の部分も生まれてしまうだなーとか、
今の時代の具体的な言葉と古来から続く三十一文字があわさる面白さもあり、
抒情的で普遍的な印象を与える、うまい歌を作る人もいる。
私が好きで読んでいる現代短歌の中にはあまり出てこない、
男女の駆け引きの主題がむしろ新鮮。
疑似恋愛的な場で働いて、相手の気持ちを汲み、言葉を選ぶホストならではの歌は
確かに万葉集や平安時代にも直結しているような気がする。
ホストなら歌くらい詠まないと、という世の中になったら本当に素敵だ。
巻末の写真で、この歌を詠んだのはこの人か、とわかるのも面白かった。