rボエーム芸術家の自由放埓な生活と恋愛模様を描いた23話から成る連短編集。
正直、ボエームのハチャメチャな生活振りにはあまり共感を覚えない。もっともそのような堅実を尊ぶのは彼らからブルジョワと軽蔑されるだろうが。
芸術に身を捧げるということは金銭的な苦労を厭わないということなのかもしれないが
...続きを読む、社会的に成功する者はほんの一握りであろう。本書では、主要登場人物のボエームたちは一応社会的にも評価される形で終わっているが、「十八 フランシーヌのマ、フ」に出てくる彫刻家ジャックのように、悲惨な最期を迎える者も多かったのではないだろうか。
もっとも、いかに借金返済を先延ばししたり人に借金を頼むか、なけなしの金でどうやって飲み食いするかなど、彼らの貧乏暮らしさえも楽しんで生活する様や固い友情の描写などは読んでいて楽しいし、また恋人との度々の別れに苦しみ悩む場面はメロドラマを見ているようで、ボエームたちの恋愛の真面目さには心打たれるものがある。
本書はプッチーニ「ラ・ボエーム」の原作ではあるが、ミミの印象はずいぶん違った。舞台では構成を分かりやすくするためだろうか、ミミは恋人に一途なt女性のように見えるがが、本書のミミは移り気で自由奔放に生きている女性として描かれている。おそらく舞台のミミは、本書の一挿話にのみ登場するフランシーヌに近いのだろう。