引っ越してみて分かったことのひとつは、捨てることは簡単だが、捨てずに活かすことは甚だ難しいということだ。どんな小さなものにも、何かの形で活かされる道があったのではないかと考えてしまうと、簡単には捨てられなくなってしまう。もちろんこの考え方は、片付かない原因となっているのだ。それは分かっている。でも、
...続きを読む断捨離は特定の領域と場面で有効なのであって、「もの」との付き合いはそんなに簡単なものではないのだ。
さて、本屋さんで見かけて一目惚れしてしまったのが、『丸林さんちの机の上の小さな家具帖』だ。この本はいわゆるDIYに関する本だ。造形作家とデザイナーの夫婦が手がけた、アンティークスタイルの木工作品が多数収録されている。同類の本が多数ある中でこの本がひときわ輝いているように見えるのは、木工DIYに多摩美大出身の二人の美的センスが盛り込まれているところだ。木工は学校の教科で言えば技術にあたるけれど、丸林さんたちは、あくまで美術をやっているのだと思う。
紹介されている作品では、小さな「もの」が巧みに利用されていて、どんなものでも何かの役に立つということを考えさせられる。捨てることによるシンプルさではなく、とことん使い切るなかで洗練されるシンプルさを僕は追求したいと思う。