スティーヴン・ジョンソンの作品一覧
「スティーヴン・ジョンソン」の「感染地図 歴史を変えた未知の病原体」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
- 作者をフォローする
- フォローすると、この作者の新刊が配信された際に、お知らせします。
無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで200万冊以上配信中!
「スティーヴン・ジョンソン」の「感染地図 歴史を変えた未知の病原体」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
Posted by ブクログ
コレラの感染源を突き止め、科学的データとしてまとめた感染地図。
コレラが1845年に大流行するまでの、ロンドンの都市として成長した理由、当時の下水システムや底辺層の暮らしぶり、菌の側からの生存戦略や遺伝的システムまで、ミクロにもマクロにも取り上げていて、ブロードストリートの悲劇が起きたのが都市成長した末に必然的で、社会学的生物学的背景から、そして人類の発見の端緒に繋がったことが、とてもよくわかり、そしてスノーが何を考え、どのような根拠に基づいて感染源を突き止めていくか、感心しながら面白く、犯人を追い詰めるドキュメンタリーとしてあっという間に読めた。信仰の強さと感染は別物だと信じる。瘴気説。居住地と高度の偽相関。地道に回ること。川底さらい、泥ひばり。アルコールと乳糖耐性と人類淘汰。戸籍と死因の統計。子供と水汲み。
解決した後の、今後の展望は歴史に基づいてない分、少しだけ余計に感じた。
コレラが小腸で増殖するもので、飲水から感染し、水を大量に飲めば治るという今から見れば当然なことを信じない当時の人の思い込み。天然痘などは空気感染するし、悪臭はもちろん病気の元だし、煙を火と思い込む。結果がわかっているので、偏見のある人々対スノーとホワイトヘッドの図式になるけど、きちんとした科学統計を取ればいつかは答えがわかる、つまり病原菌対人間の図式。試行錯誤し、偏見なく緻密なデータをだし、視覚的に分からせる地図を作る。菌を科学的に知覚できないビクトリア時代の、それでも迷信や思い込みに惑わされず原因を突き止めていった人々の強さ。
新型コロナが話題となっている昨今。マスクだの感染源だの持続力だの経路だの、情報が錯綜して人々が右往左往しているけど、100年後の人々からすれば、簡単で唯一の解決策や感染源が分かっているのに、直感で行動していた未開な人たち、と思われるのかもしれない。
p75 彼が疫病大流行の初期に不潔さと発症率が一致しないことに気づいたのも、以前からどの家の衛生状態がよくて、どの区画が不潔かを詳しく知っていたからだ。
p63 コレラは数千年のあいだひっそりと暮らしていた。繁栄の障害となったのは、他人の排泄物をあえて食べる人はいないという点と、たとえそうしためったにない機会があったとしても、つぎに同じ機会がいつめぐってくるかわからないという点だった。
水洗トイレを使うことや私企業の水道会社から高い水を買うことをおぼえたロンドン市民は、より快適で贅沢な生活を享受できるようになったが、知らないうちにコレラ菌のDNAをより危険なとのに組み換えていたのだ。
p125 この街全体を覆っていたある種の逃れられない疑念のことを心に留めておかなければならない。それは、この街ににはひびが入りはじめているという程度のものではなく、こんな大それた都市を作ってしまったことがそもそもの間違いで、近いうちにその罰が下されるのではないかという疑念だ。
Posted by ブクログ
新型肺炎のニュースが世間を騒がせているもののこれを読むと、新型肺炎は予防策も分かるし、現代日本は医学や公衆衛生もしっかりしてるから、まだましだと思えてくる……。1850年代のロンドンはなかなかの魔境でした……
汚い話になりますが、当時のロンドンは水洗トイレが設置され始めていたそうですが、それは特に下水処理されることもなく、排水されていたそう。その水の行き着く先には汚泥のような汚水溜めが……そして本の中でも散々言及されますが、当時のロンドンの川や下水管からの悪臭もひどかったそうです。最初の記述だけで、今の日本に生まれて良かったと心底思います。
そんな衛生状況の中、ロンドンの都市のある一画で起こったコレラの集団感染。コレラって名前くらいしか知らない病気だったのですが、読んでいてその症状の凶悪さに血の気が引く思いになります。嘔吐と下痢によって数時間の内に、身体の30%の水分が失われ、さらにその便は小腸の細胞が混じって白く見えることから「米とぎ汁様便」と呼ばれるそうです。
そして脱水症状により、身体の機能は心臓などの重要な部分の機能は残しつつも、そうでない部分の機能は徐々に停止していくため、感染者は自分の身体が死に近づいていくのが分かるとのこと。いや、もう恐ろしい……
当時は細菌の概念もなく、臭いが病気を媒介していると考えられていた時代。そんな中、聖職者として地元住民たちを見舞い続けるホワイトヘッドと、臭い以外にコレラの感染経路があるとにらんだ医師のジョン・スノーが、それぞれ行動を開始します。
コレラの感染経路は水なのですが、それにいかに迫りそして証明するか。この過程がとても面白い! 当時のロンドンの公衆衛生の状況や、そして地元住民への地道な聞き込みから、感染経路を絞りついに感染源が明らかになる過程は、ミステリ風味もありとてもスリリングです。
そうした二人の活躍の合間合間に挟まれる学術的な話も非情に多種多様。当時のロンドンの状況から現在にも繋がる都市文化論や、公衆衛生論といったトピックに、また細菌や医療、遺伝子といった生理学、生物学的な話題にも話は広がります。イキった言い方をするならば、様々な知的興奮が味わえる、そんな一冊です。
ジョン・スノーとホワイトヘッドの奇妙な絆にも、思いを馳せてしまいます。そして著者の大都市に対する一風変わった愛もまた印象的。
歴史的な読み物としても、様々な知識を得られる学術的な一冊としても、面白い本でした。