バブル崩壊以降の日本経済の停滞についての状況・原因・対応策等についての本を何冊か集中的に読んでおり、本書もその一環。
これまで数冊読んだが、筆者によって、主張している内容がかなり異なる。
本書の筆者は、明らかに旧民主党シンパである。鳩山さんから始まる民主党政権に同情的である。ということは、自民党政権
...続きを読むに対しての評価が厳しいという立場である。
日本経済の長期停滞については、「バブル崩壊以降」というのが一般的理解であるが、しかし、より細かく見ると、91-93年のバブル崩壊後の景気後退の後、93年11月から景気は回復している。長期停滞の本当の開始は、97年6月から。橋本内閣の、「構造改革」に端を発する、賃金の落ち込みによる民間消費支出の落ち込みが原因、というのが筆者の基本的な説明である。
その後の自民党内閣は失政を引き継いだ。一時、民主党が政権をとり希望が持てたが、不運にも民主党は自民党に政権を明け渡した。以降の自民党内閣は、アベノミクスに至るまで失政を繰り返している。
以上が、筆者の主張だ。
私が読んだ他の本でも、政府の政策が日本経済の長期低迷の原因であると主張するものはいくつかあったが、本書においては、長期低迷の要因として「政府の政策」が占める役割が大きいというところが特徴の一つだ。
もう一つの特徴は反自民党政権、反アベノミクスであるにも関わらず、リフレ派に近い主張をしていることである。日本は巨額の財政赤字を抱えているが、それは、すぐにどうこうなる、という話ではなく、財政引き締め等の策はとるべきではないという主張である。
何冊か本を読んでみて、学者の間でも(私が読んだ本は、多くが経済学者の書いたものだ)、日本経済の長期低迷の原因は統一見解がないのだということを知った。経済学って何なのだろうか?とも思ってしまうが、逆に統一見解があるのであれば、このような長期低迷状態にはなっていなかったということだろう。