ウォルター モズリイの作品一覧
「ウォルター モズリイ」の「流れは、いつか海へと」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「ウォルター モズリイ」の「流れは、いつか海へと」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
Posted by ブクログ
初のウォルター・モズリイ。
結構な作品数があるにも関わらず、翻訳された数は少ない&ほぼ絶版。そのためこの作品以外で名前を聞いたことがありませんでした。
これぞニューヨークの私立探偵物、と言って良い作品だと思う。地道に、こつこつと関係者を回り、真相へと辿り着く。たまに攫われたり、たまに非合法なことをしたり。
話の筋は二つ。過去に身に覚えのない犯罪で収監され全てを失った主人公ジョーに、あれは用意周到な罠だったことを伝える手紙が届く。同じくして、刑事殺しで捕まっている政治活動家の無実を晴らしてほしいとの依頼が。自身の過去と対峙しながら、調べれば調べるほどきな臭い刑事殺し。題名のとおり、この二つの流れが、いつ合流して海となるか、ワクワクさせられた。
娘のエイジア(めちゃくちゃ良い子!)、元娼婦のエフィー、そして何より重犯罪者の相棒メルカルトが本当に魅力的。この3人に好かれているジョーは何者なんだと笑
ただ、登場人物があまりにも多いので、登場人物表をもう少し充実して欲しかった。結構、読み返しが多かった。その点だけは残念。
シリーズ物じゃなくても良いので、もう少し翻訳されれば嬉しい作者さんでした。
Posted by ブクログ
国産ミステリーの犯罪のほとんどが、極めて個人的な犯罪を扱うのに比して、世界の賞を獲るような作品は必ずと言っていいほど、国家レベルの犯罪、あるいは政府機関の犯罪、もしくは制度の生み出す社会悪が生み出す犯罪を描くものが多い。単なる謎解き小説にとどまらず、犯罪を小説の題材として描くことで、何らかの社会的メッセージを描くもの、そうではなくても高位なレベルで行われる犯罪に、個人として立ち向かわねばならない状況を小説の背骨に据えているものが多いと思う。
国産小説にそれが皆無とは言えないけれど、あくまでそうした部類の読み物とは一線を画し面白さだけを追求して、家族や男女間の愛憎のもつれ、ちっぽけな利権の殺意などを題材にした、後に残らないその場しのぎの作品が作家の名を忘れられないためだけに年に何冊という勢いで続々出版されてしまう。それがまた、当面の面白さやゲーム性だけを求める読者に受け入れられるという現象や、そうした図書文化のスケールの小ささにぼくはいつも愕然とする。良い小説とは、ぼくらが生きる時代や社会背景に、物語の中で密接に関わらなければいけないと思う。その時代の碑としての軌跡を残すべきものでなければならないと思う。ミステリーとしての伏線やトリックなど技法がすべてではないということだ。いわゆる小説としての成熟度。そして試されるべきはむしろ読者の成熟度であろう。
さて、本書を読んでいて思ったのは、主人公の黒人探偵の「原罪」そして「贖罪」である。それを克服しなくては生き続けることができないほどの主人公の生への枯渇である。そして彼を追い込んだのは、ちまちました犯罪ではなく、社会的問題として断罪されてもよい種類の組織悪による圧倒的権力と社会構造なのである。それも警察という名の。
こうしたことはニューヨークを舞台にしたこの作品だけではなく、多くの映画にしても小説にしても、世界の娯楽小説の軸に使われることが欧米エンターテインメントの圧倒的主流である。国の悪に対し、己の身を守る。自分のために、家族のために。そして何よりも生きる意味を問うとき、沸騰せざるを得ない己れの尊厳のために。
そう、あのウォルター・モズリイが約30年ぶりに帰って来たのである。色のついたタイトルのイージー・ローリンズを主役とする戦後1940年代のLAを舞台にしたシリーズではなく、現代のニューヨークで。P287に、作者がしかけたオマージュには、モズリイ・ファンとしてはにやりとしてしまう。そしてイージーとは異なる現代のNYならではの生活スタイル、時代や場所が変わっても一向に変わらぬ男たちの持つべき尊厳と生き様。イージーの無法で無謀でコントロール不能な相棒マウスを覚えているだろうか? 彼を想起させる、強烈にアウトローなイメージを噴出させる重要助っ人メルの存在もがある。時代は変われど、ハードボイルドにはアウトローも欠かせない存在である。
新主人公の課せられた宿命や不運、それを乗り越える一途さや、周辺人物の魅力的な個性がものを言い、火を噴く怒りをどう収めるのか? この許されざる強烈な悪党どもを、どうやってぶちのめすことができるのか? 不安と緊張の中にも期待がうずく緊張の各ぺージ。
ハードボイルドとは、時代を変えては、その時代を映す鏡になり得る。面白さの中に、驚くほどの時代描写・社会への嗅覚が見られる事実と、そこへの参画意識、そして何よりも闘志というところにこそ、ハードボイルドのコアな部分が潜んでいるように思う。是非そんなポイントをこの作品の中に捜し当てて頂き、現代の小説というものの可能性に、改めてご注目願いたい。
Posted by ブクログ
主人公のオリヴァーは元警察官。
ある事件ではめられて警察を追われ、妻にも離縁され、生活をすべてを失った。
今は探偵として冴えない日々を送っている。
唯一の救いは娘が味方であること。
まだ高校生だが、探偵事務所の秘書としてオリヴァーを支えている。
原寮が「これが、人生を描くということだ」 と推薦文を書いていたので、チャンドラーばりのガチなハードボイルド小説かと思っていたが、オリヴァーは自分の失敗を忘れられず、娘に支えてもらいながら生きている等身大の、どちらかと言うと駄目な人生を歩んでいる主人公として描かれる。
だが、過去を精算できるチャンスを掴み、腹を括って命をかけて向き合っていく。一緒に立ち向かってくれる悪人メルカルトや祖母のキャラクターがいい。
オリヴァー自身にはあまり自覚が無さそうだが、周りの人たちが応援したくなるような生き方をしている。真摯に生きているのだ。正しいことは正しい、自分が信じた真実にブレない行動をする。そこに共感するさまざまな人たちが惜しみない協力をしてくれ、オリヴァーは自分の人生を取り戻していく。
まさしく、「これが、人生を描くということだ」なのだろう。
人生、いい時もあれば悪い時もある。一度の失敗で人生をあきらめるな。一人ではない、一緒に乗り越えてくれる仲間がいる。ハードボイルド風なある男の成長物語だ。
Posted by ブクログ
「濡れ衣への復讐のために耐え忍ぶ」という主人公の境遇から、デュマのモンテクリスト伯を彷彿とさせられる本書。作者のウォルター・モズリーは、本作に限らずギャング、ヘロイン中毒者、傷ついた魂、そして不屈の精神など、大都市ニューヨークのサバイバルをテーマとした作品をリリースしています。一連の作品でモチーフとなるのは、不正や腐敗の歴史を認めようとしない警察の暗部で、いずれも説得力のある物語は期待を裏切らない出来でした。今回も主人公のオリバーが自身に仕組まれた陰謀に翻弄されつつ、並行して発生した別の事件も交錯するという風に、いい話が展開されます。ですが、今作で私が一番興味を持ったのはストーリーそのものではありません。それはオリバーの世界観と作者の描写の仕方にあります。例えば、主人公のジョー・オリバーが新しい人に会うときには、肌の色だけでなく、その人が何を着ているのか?など、かなり細かい説明をするんですよね。このようにして、大都市ニューヨークの暗部を露にするような世界観の描写のディテールも本作の大きな魅力です。