読みやすく主張もわかりやすかったです。著者はスイスのビジネススクールIMDの若手教授として企業のエグゼクティブ向けプログラムにも携わっているとのこと。ハーバード大学でDBA(経営博士号)を取得していることからわかるように、本書もデータ分析というよりは、企業の事例を紹介するハーバード流ケースメソッドに
...続きを読むなっています。本のタイトルになっているように、ある企業が長期間にわたって競争優位性を保つためには(生存するためには)、LEAP(跳躍)が必要だとのこと。ここでの跳躍とは、高みに飛ぶというよりは別の領域に飛ぶというニュアンスです。
この本を読んでいて思い出したのが神戸大学の三品和広先生が書いた「戦略不全の論理」「戦略不全の因果」です。詳しくは覚えていませんが、確かこの本では「事業転地」というような概念が提示されていて、長期間競争優位性を持続する企業は、事業グラウンドを転地している、ということが定量的に示していました。これはまさにLEAP(跳躍)ということでしょう。ですから本書は三品理論をケースで分かりやすく示した本という位置づけになるのかもしれません。ただ本書のなかで三品先生の研究については触れられていなかったので、ユー先生は三品理論を知らないのかもしれません。
本書で紹介されているケースとして、たとえばスイスの製薬企業があります。製薬企業はもともと有機化学分野での競争をしていたわけですが、有機化学分野のオートメーション化が進むと差別化も難しくなりますから、次に微生物学の領域にLEAPし、土壌の中に住む微生物の探索に移るわけです。そして近年ではゲノム解析の領域へとLEAPしているというわけです。変化が激しい時代において他の領域にLEAP(跳躍)することは確かに必須でしょう。しかもこれは企業に限らず人材面でも同様と思います。学生時代に学んだスキル領域だけに固執している人は、今の時代はなかなか価値を生み出せないはずで、個人レベルでもLEAPが必要だと思いました。