アメリカに移民した日本人のハナコ一家が、敗戦後に日本に帰国する。
第二次世界大戦中、日系人はアメリカ国籍を持っていても市民権を剥奪されて、日本人収容所に入れられていた。ハナコの両親も、その時に国籍を失っていたため、帰国するしかなかったのだ。
日本にはハナコの父の両親(じいちゃん、ばあちゃん)がいて、
...続きを読むみんなを歓迎してくれるが、貧しい小作人で暮らしは厳しく、食べるものにも困る生活。小さな弟のアキラは、いつもお腹をすかせて不機嫌になるし、ハナコは慣れない日本語で小学校に通うが友だちもできない。
広島で戦災孤児となったキヨシと妹のミミは物乞いをして、ハナコの家から米を盗んでいってしまう(のちに紫の着物を持ってくる)。
つらい体験をしながらも、前向きに進もうとするハナコだったが、当時の日本には小作人には土地を取得できる可能性もなく、生き方を変えていく希望もないことから、両親がアメリカ国籍を再取得して、再度、アメリカに渡ることを考え始める。しかし、その再取得には何年もかかることから、両親は渡米を諦め、アメリカ国籍のある子どもたちだけをアメリカに帰国させる決断をする。
敗戦当時、日本とアメリカの二つの国を行き来した日本人(日系人)たちの苦労。当時の日本の現実が垣間見えた。
日経三世の方が書いたらしいが、よく日本で見かけるような、疎開先でいじめや虐待に遭う、というような定番(?)な展開はなく、老父母は善良で愛情深く優しい。それは良かった。
ただ、いかんせん貧しく、食べるものが不足していることから、暮らしが苦しいことが語られていく。その結論として、日本では良い暮らしが望めないので、子どもたちだけでもアメリカに帰そう…という結論になるところが、アメリカ的と言えば、アメリカ的。
多分、実際に著者はアメリカに帰国したのだと思うが、それで問題がすべて解決した(良い暮らしが送れるようになった)のであれば、まあ、良かったとも言えるし、逃げ場もなく日本で生きていくしかないキヨシのような子どもたちをどうすれば良いのか、ということには、この本には答えがなく、いくぶん割り切れなさが残る。