作品一覧

  • スティーブ&ボニー
    5.0
    1巻1,980円 (税込)
    誰も読んだことのない、真面目で、おかしくて、ハートウォーミングな、ゲンシリョク・ロードムービー・エッセイ! 福島県で夫と植木屋を営む著者のもとへ、アメリカで開かれる原子力に関する会議に出席しないかというメールが舞い込む。 引き受けたはよいものの、言語や相互理解の壁に、どうしたものかと途方に暮れる著者。 現地に飛び込み、原子力や放射線防護について意見を異とする人びとと交わるうちに、 歴史・民族・国家・戦争・テクノロジーと人間のさまざまな関係性が浮かび上がる。 その旅路を等身大の視点から描いた連作エッセイ集。 衝撃のデビュー作『海を撃つ――福島・広島・ベラルーシにて』(みすず書房)に続く第二作! 山本貴光さん推薦!「原子力を語ると、どうして話が通じなくなるのか。それでも分かりあえるとき、何が起きているのか。これは、そんな絶望と奇跡をめぐる旅の記録である」 目次 1 奇妙なはじまり 2 本場・原子力ムラとの出会い 3 安請け合いのゆくえ 4 スティーブとの対面 5 裸足の数学者 6 ハンフォードからヒロシマへ 7 ダンとのドライブ 8 砂漠のピクニック 9 強制収容キャンプの記憶 10 キャラバンは砂漠をゆく 11 「BUY U.S. SAVINGS BOND」 12 砂漠に夕日は落ちる 13 いまは、いい友達 14 会議がはじまる 15 「オルマニーへのまなざし」 16 風邪のスープ 17 ソドムとゴモラのケーキ 18 「恐ろしいのは人間です」 19 初恋のようなハグ 20 絶望のような希望 21 宇宙語で話す 22 ゲニウス・ロキの生まれるところ 23 愛を込めて あとがき 参考資料
  • 海を撃つ――福島・広島・ベラルーシにて
    4.6
    1976年生まれの著者は、植木屋を営む夫と独立開業の地を求めて福島県いわき市の山間部に移り住む。震災と原発事故直後、分断と喪失の中で、現状把握と回復を模索する。放射線の勉強会や放射線量の測定を続けるうちに、国際放射線防護委員会(ICRP)の声明に出会う。著者はこう思う。「自分でも驚くくらいに感情を動かされた。そして、初めて気づいた。これが、私がいちばん欲しいと願っていた言葉なんだ、と。『我々の思いは、彼らと共にある』という簡潔な文言は、我々はあなたたちの存在を忘れていない、と明確に伝えているように思えた。」以後、地元の有志と活動を始め、SNSやメディア、国内外の場で発信し、対話集会の運営に参画してきた。「原子力災害後の人と土地の回復とは何か」を掴むために。事故に対する関心の退潮は著しい。復興・帰還は進んでいるが、「状況はコントロールされている」という宣言が覆い隠す、避難している人びと、被災地に住まう人びとの葛藤と苦境を、私たちは知らない。地震と津波、それに続いた原発事故は巨大であり、全体を語りうる人はどこにもいない。代弁もできない。ここにあるのは、いわき市の山間に暮らすひとりの女性の幻視的なまなざしがとらえた、事故後7年半の福島に走る亀裂と断層の記録である。

ユーザーレビュー

  • スティーブ&ボニー

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    官公庁が相手の打ち合わせで、技術畑でない方としばしば同席する。そのなかで彼ら彼女達が求める立場的な「事情」に、建築の技術者である私は工学的な「正しさ」をぶつけてしまったことがある。もちろん反応は鈍く、その後の気まずさは言葉にし難い。この本に沿って言えば、砂漠の強風で舞った砂をジャリっとやってしまう感じだろうか。

    “けれど、「わかりあう」ことは、見解を一致させることを意味するものではない。人と自分は違う。違いにはそれぞれの理由も事情も考えもあって、かんたんにどちらかがまちがっているといえるものでもない。誰だって人間は、他人には測ることのできない側面を抱えているものだ。
    「わかりあう」とは、その

    0
    2023年01月21日
  • 海を撃つ――福島・広島・ベラルーシにて

    Posted by ブクログ

    NHK Eテレで紹介あり、著者が語る淡々と語る、あの日から福島での日々。静かに怒っているというお話に、思わず引き込まれました。海を撃つ、という言葉の意味合いも最後にわかり、その重さを受け止め兼ねております。小松理虔さんの新復興論と合わせて読んでゆきたい本でもあります。★五つ

    0
    2021年06月26日
  • 海を撃つ――福島・広島・ベラルーシにて

    Posted by ブクログ

    福島第一原発事故による放射能汚染にどう向き合えばいいのかという素朴な問いの一つの答えは、何はともあれまずは線量を測ることからだと、自身も携帯用の線量計を身に付けながら、汚染の実態がわからず不安を感じている住民に、少しずつ線量観測することを広めていく。それは、筆者がチェルノブイリ原発事故後の対応を、実際にノルウェーとベラルーシのそれぞれ現地を訪れることから知り得た答えでもあった。
    いま、世界は新型コロナウィルスの感染脅威にさらされている。有効なワクチンもないまま、とりあえずは自衛するしかないという状況の中で、唯一確かなことは、筆者たちが放射能汚染の実態を知るために線量計を携行して実態を確認したよ

    0
    2020年07月22日
  • 海を撃つ――福島・広島・ベラルーシにて

    Posted by ブクログ

    筆者の安東量子さんは、広島のご出身であるが、福島ご出身の方とご結婚され、開業のために福島県いわき市の山間部にお住まいになっていた時に、震災を経験される。
    現在、「ETHOS in Fukushima」という団体の代表を務められているが、その団体のHPには、団体の目的が下記の通り記されている。
    【引用】
    原子力災害の福島で暮らすということ。それでも、ここでの暮らしは素晴らしく、よりよい未来を手渡す事ができるということ。自分たち自身で、測り、知り、考え、私とあなたの共通の言葉を探すことを、いわきで小さく小さく続けています。
    【引用終わり】
    この文章の中に言及されており、また、本書「海を撃つ」の中で

    0
    2023年06月06日
  • 海を撃つ――福島・広島・ベラルーシにて

    Posted by ブクログ

    「ここで暮らしてきたのだ。ただここで」

    理屈ではない。数字でもない。
    ただここで暮らしてきたという事実。

    誰も決めることはできない。
    その人の価値を。
    その人が愛する庭を。
    その人が愛する土地を。

    故郷を失うということが、これほどまでに、つらく、そして複雑な感情を引き起こすのか。

    「支援」というものの難しさを実感する1冊。

    相互の違いを埋め、信頼を生み出すための魔法があるわけではない。愚直に足を運び、困りごとを聞き、一緒に考える。それしかできないのかもしれない。

    0
    2022年01月23日

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