デアゴスティーニの分冊百科が一冊になった
ような実に濃厚なテーマを孕んでいて、それがわずか1,782円 って、安いよなぁとつくづく感じた本。
第1章「旅に出る」は電通の入社直前に「中国・ロシア・
中央アジア」をバックパッカーとして「何でも見てやろう」と意気込むものの、ロシアにはつれなくされ、
チベ
...続きを読むットでは鳥葬を目の当たりにし言葉を失い、
戦争の街アフガニスタンでは底知れぬ恐怖感に苛まれ…、
モラトリアムの最後を飾るたったひとりの旅は拠り所のない疲弊感を漂わす旅行記を綴る。
第2章「社会に出る」は電通に入社、コピーライターと
なり、TCC最高新人賞受賞と順風満帆な船出となり、
「俺はスタークリエイターの階段の入口に立った!」と
実感する日々を綴る。
第3章「人生がフリーズする」は自身が病に倒れ、妹の死・父親の大病…と、身内の相次ぐ災難に直面する一方で、第一子を授かる。その感動も束の間、3.11に遭遇し、実家大阪へ舞い戻るといった、到底仕事どころではない激動の日々を綴る。
第4章「人生の逆襲」&第5章「アホになる」は「人生の迷子となった」と悟った著者は広告の現場に復帰するも、
さてこれからクリエイターとしてどう生きるべきかを模索する日々が続く。その「もがき」の中で得た結論は
「コピーライターとして腕を磨き、賞を獲り、よりよい
クライアントを担当し、スタークリエイターとなる道は
常に大渋滞。病が癒えぬ自分には無理。自分にしかできないこととは?」という思いを抱き、新たな一歩を踏み出すべく毎日カメラ片手に街を彷徨う。
行き着いた先は「新世界商店街」。この商店街との出会いと交流が「商店街ポスター展」を生み、以降広告業界の
異端児として地方創生の業務に深く関わっていくようになる…。 本書巻末には著者の手がけた仕事の一部−「商店街ポスター296枚」「地方の町おこしキャンペーン広告」-が収録されている。商店街しかり、寒村しかり、それらの一連の仕事を手がけたのが「電通」の「一正社員」であることに大きな意義がある。都築響一氏をして「一般に広告って、いつも上から目線だ。『これがいいんだから買え』みたいな。でも日下くんだけは、いちばん下のほうでうごめいているなにかをぐっと押し上げて、僕らに見せてくれる。」と言わしめる。天下の電通の広告マンが終始この姿勢と目線と「おもしろい×社会にいい」をモットーに取り組むからクライアントとの深い交流を生んだ。「商店街」「まちづくり」「アート」「広告・PR」「地方創生」「自己表現」…、幅広い文脈で読める快著。オススメ!