稀見理都の作品一覧
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Posted by ブクログ
エロマンガの研究には、永山薫『エロマンガ・スタディーズ』という名著がある。発表された2006年当時、エロマンガというジャンルは、研究や評論の対象としてはほぼ手つかずの分野。その未開の地を開拓して、エロマンガの歴史やそこで描かれるセクシャリティを体系立てて解説し、エロマンガ評論というジャンルをつくった画期的な本だった。この『エロマンガ・スタディーズ』に衝撃を受けてエロマンガ研究を始めたのが、本著の著者、稀見理都(このペンネーム自体がエロマンガ的)だ。
本著は、稀見理都の著作として2作目になる。そこで表現史を選んだのは興味深い。エロマンガは、その性質上、一般のマンガでは見ることが少ない部位やポーズ、シチュエーションを書く。また、エロという機能性が求められる。その結果、例えば「アヘ顔」や「乳首残像」のような、図像的に一般のマンガでは見る機会が少ない、ある意味では「とがった表現」が見受けられるからだ。表現の著しい進化や、それが一般のマンガに環流していく様子は、「第1章 「おっぱい表現」の変遷史」を読めばよくわかる。
一般のマンガ評論の分野で、表現論が大きく注目されたのは1995年に出版された「マンガの読み方」からだ。それまでの評論ではほぼスルーされていたマンガの「表現技法」について、手探りで見つけていくような内容だった。そこから2005年の伊藤剛「テヅカイズデッド」に至るまで、マンガ表現論ができあがる過程は、非常にスリリングであった。当時のムーブメントでは、どうマンガ評論を刷新し、新しくジャンルを作っていくかが、強く意識されていたように思う。
あのとき感じた「ジャンルを作っていこう」という熱気が本作にも宿っている。エロマンガ研究は、ジャンルの性質上、研究者がそもそもいないうえ、研究の基盤になるようなアーカイブやDBが存在しないそうだ。稀見理都は、どうもそれを整えながら研究をしようとしているらしい。エロマンガ界に逆風が吹いているなかで、このような人がいるのは、心強い。
エロマンガを唾棄すべきものだと思っている人も、だまされたと思って、是非この本を読んでほしい。