少し興味を覚えて入手し、紐解き始めてからは頁を繰る手が停められなくなった。「より多くの人達が知っておくのが善い」と思われる内容が豊富だ。逆に言えば、そういう内容であるが故に本が登場したとも言い得ると思うのだが。
題名に“防衛”と在るが、軍事行動というような内容ではない。災害対策、防災情報というような
...続きを読む事柄、そういう問題意識を喚起しようという内容の一冊である。「巨大な災害から人々を護る」ということになれば、それは“防衛”そのものであろうという、題名の理由も本書には出ていた。
阪神大震災(1995)や東日本大震災(2011)というような大規模災害に関しては、被災地域に居合わせた訳ではなくとも、災害発生時に大きく伝えられ、繰り返し様々な話題が取上げられていることから、「凄い災害」ということは承知している。あのような次元の災害が首都圏等で発生すれば大変であることは間違いないが、問題なのは「あの程度で済まない大災害」という可能性が排除し悪いということなのだと本書では説かれている。
本書では「首都直下型地震」というようなモノで想定される事態等を説く章、そして「南海トラフ巨大地震」というようなモノで想定される事態等を説く章が設けられている。2つの章を費やし、阪神大震災(1995)や東日本大震災(2011)というような次元の大規模災害が東京で発生した場合に生じると見受けられる困難、加えて複数の大地震や富士山のような火山の噴火も併発し得る、場合によってそこに大雨が降る可能性さえ排除出来ないということを説いているのである。
古い記録を見れば、富士山の噴火と大地震が連動するという事態は「在った」のであって、そのうちに発生する可能性は排除出来ない。富士山は300年も噴火はしていないが、それでも活火山なのだという。噴火すれば、多量の火山灰が降る状況や、そこに纏まった雨が降るという情況も酷く大変であることが指摘されている。
こうした情報に加えて、比較的近年の災害時の教訓のようなことも綴られている。全般的に、災害対策、防災情報というような事柄、そういう問題意識を喚起というように纏まっている訳だ。
個人的には、比較的近年の災害時の教訓のようなことに関して、もう少し厚みを持たせる、分量を増やすというようなことが在っても好かったような気がする。この部分には「そういうことも在ったか…」と気付かされる内容が多く含まれ、読者が住んでいる地域で防災に関連したことを考える有益な情報になると思ったのだ。本書1冊を読む時間さえ見出せないという程度に多忙な方でも、この“教訓”部分だけは必読かもしれないと思った。
更に気になった。例えば「南海トラフ巨大地震」というようなモノは、関東、東海、近畿、中国、四国、九州という程度に被災範囲が拡がると見受けられる。例えば「富士山噴火」となれば、関東平野の殆ど全部と静岡県や愛知県の全部または一部、加えて山梨県や長野県の一部という程度の広大な範囲、場合によって更に広い範囲に火山灰が降ると見受けられる。そういう大変な事態でも、「相対的にダメージが少ない、または影響が余り無い」という国内の地域は恐らく残ると思う。その残った地域と手を携える可能性、著者が“おわりに”で引いた後藤新平の言のように「人の御世話にならぬよう 人の御世話をするよう そして報いを求めぬよう」という程度の考え方で、全国の様々な地域の人々で手を携え合うような考え方が前面に押し出されても善かったような気もしながら本書を読んでいた。
正直に言えば、自身は「災害への備え」というような事柄に、個人的には然程の関心を示さずに漫然と過ごしているかもしれない。1923年の関東大震災から100年という年、思い掛けない大災害の可能性も指摘されている中、この種の本で問題意識を喚起してみるということも必要かもしれない。