作品一覧

  • 一〇〇年前の女の子
    4.0
    「わたしにはおっ母さんがいなかった」 明治四十二年、上州からっ風の吹く小さな村で生まれた母テイは、米寿を過ぎてから絞り出すように語り始めた――生後一か月で実母と引き離され、養女に出された辛い日々を。そして故郷をいろどった四季おりおりの行事や、懐かしい人びとを。 新緑の茶摘み、赤いタスキの早乙女の田植え、家じゅうで取り組むおカイコ様。 お盆様にお月見、栗の山分け、コウシン様のおよばれのご馳走。 初風呂と鮒の甘露煮で迎えるお正月様。 農閑期の冨山のクスリ売りと寒紅売り、哀愁のごぜ唄。 春には雛祭りの哀しみがあり、遊郭での花見には華やかさがあった。 語る母、聴き取る娘。母と娘が描きあげた、100年をけなげに生きた少女の物語は、色鮮やかな歳時記ともなった。 2010年に刊行以後、さまざまな新聞・雑誌に書評が掲載され、NHK「ラジオ深夜便」での、著者の「母を語る」も評判となった。多くの感動と共感を読んだ物語の待望の文庫化。新たに、足利高等女学校の制服姿のテイや家族写真、また新渡戸稲造校長の女子経済専門学校での写真などを掲載。解説は中島京子。

ユーザーレビュー

  • 一〇〇年前の女の子

    Posted by ブクログ

    明治42(1909)年生まれの女性・テイの生涯。明治になって40年以上が経つにも関わらず、今から100年前の農村部には良くも悪くも江戸時代の匂いを感じる。農家としての歳時記は、いろいろな神様への感謝と、過酷な労働の繰り返しだ。農家へ嫁いだテイの母が、婚家と馴染めずに生んだ子を手放してから、テイには生家を継ぐこともできない運命が待ち受けていた。しかし、天は彼女に勉学の才能を授けた。読んでいてこちらも救われる思いだ。コロナ禍が過ぎたら「高松村」を訪ねてみたい。

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    2020年07月21日
  • 一〇〇年前の女の子

    Posted by ブクログ

    明治42年8月10日生まれの寺崎テイは、平成21年(2009年)に100歳になった。この本は寺崎テイの生まれ故郷である北関東の田舎(高松)の風景や人々の暮らし、昭和初期の東京の様子をまとめたもの。ひとりの女の子の物語である本書が、なぜこんなに驚きに満ち
    懐かしく、また切なく心を打つのか。
    土地柄こそ違うけれどほぼ同世代である両親の思い出話、聞いた当時は分からなかったいくつかの出来事がありありと目に浮かぶ。
    当時の人たちが何を考え、何を大事にしていたか?家族のこと、学ぶこと、働くこと、助け合って生きていくことの意味を考える。同じく、北関東に生まれ育った義母に思い出の話を聞きたくなった。

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    2016年09月02日
  • 一〇〇年前の女の子

    Posted by ブクログ

    自分の母親の語りを一冊の本にしたもの。養女に出され、結婚するまでのことが語られている。半生についてのインタビュー、いまならナラティブか。
    特段の出来事があるわけではない。ひとりの成長しつつあった女の子を通して、過ぎゆきし日常が語られている。舞台は足利近郊。
    興味深かったのは、足利のこと。彼女の目には、足利が大都会、一大文化都市として映っていた(それもそのはず、かつては足利氏の本拠地。足利学校もあったんだもの)。そして憧れの足利高等女学校に通った。
    著者は平凡社の編集者だった。弟は文化人類学者の船曳建夫、夫は心理学者の岸田秀。ということは、語り手は船曳先生のお母さんだったわけか。

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    2025年08月10日
  • 一〇〇年前の女の子

    Posted by ブクログ

    自分の母の生涯をここまで聞き取り、記すことができたことにまず驚いた。
    さらに北関東の民俗学的な価値にまで及ぶ食生活、地域行事、田畑の耕作、「家」の風習や慣習…
    ただ、自分だけの力や思いだけではどうにもならない、女性にとって決して生きやすい時代ではない中で、強い信念のもと勉学に邁進する姿は、田舎の様々なしがらみを一つずつ解きほぐしていくように感じた。

    戦前の女性にとって厳しい時代に、女性のために力を尽くす多くの先人が、多数存在したことを知ったことはとても有益だった。

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    2023年03月23日
  • 一〇〇年前の女の子

    Posted by ブクログ

    ノンフィクションは納得できて好きだ。
    100年前の筑波村高松の生活はとても魅力的だった。
    主人公テイの幼少での立場は、必ずしも幸せとは言えないものの、制約あるなかで充実した日々を過ごせたのではないだろうか。
    自分が羨ましいと感じたのは、お正月とかお花見とかコウシン様とかの行事だ。
    昔の人達が当たり前におこなってきた行事がとてもキラキラ輝いてみえた。
    人々との交流も濃厚で面倒くさそうでもあり、羨ましくもある。
    電化製品がない(電灯すらない!)時代は不便でつまらなそうに感じるけど、心は想像力に富み、豊かだったかもしれない。
    最近ふと思う。ひと昔の生活をすれば色々とうまくいくのではないかと。

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    2022年05月16日

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