船曳由美のレビュー一覧
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明治42年8月10日生まれの寺崎テイは、平成21年(2009年)に100歳になった。この本は寺崎テイの生まれ故郷である北関東の田舎(高松)の風景や人々の暮らし、昭和初期の東京の様子をまとめたもの。ひとりの女の子の物語である本書が、なぜこんなに驚きに満ち
懐かしく、また切なく心を打つのか。
土地柄こそ違うけれどほぼ同世代である両親の思い出話、聞いた当時は分からなかったいくつかの出来事がありありと目に浮かぶ。
当時の人たちが何を考え、何を大事にしていたか?家族のこと、学ぶこと、働くこと、助け合って生きていくことの意味を考える。同じく、北関東に生まれ育った義母に思い出の話を聞きたくなった。 -
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自分の母親の語りを一冊の本にしたもの。養女に出され、結婚するまでのことが語られている。半生についてのインタビュー、いまならナラティブか。
特段の出来事があるわけではない。ひとりの成長しつつあった女の子を通して、過ぎゆきし日常が語られている。舞台は足利近郊。
興味深かったのは、足利のこと。彼女の目には、足利が大都会、一大文化都市として映っていた(それもそのはず、かつては足利氏の本拠地。足利学校もあったんだもの)。そして憧れの足利高等女学校に通った。
著者は平凡社の編集者だった。弟は文化人類学者の船曳建夫、夫は心理学者の岸田秀。ということは、語り手は船曳先生のお母さんだったわけか。 -
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ノンフィクションは納得できて好きだ。
100年前の筑波村高松の生活はとても魅力的だった。
主人公テイの幼少での立場は、必ずしも幸せとは言えないものの、制約あるなかで充実した日々を過ごせたのではないだろうか。
自分が羨ましいと感じたのは、お正月とかお花見とかコウシン様とかの行事だ。
昔の人達が当たり前におこなってきた行事がとてもキラキラ輝いてみえた。
人々との交流も濃厚で面倒くさそうでもあり、羨ましくもある。
電化製品がない(電灯すらない!)時代は不便でつまらなそうに感じるけど、心は想像力に富み、豊かだったかもしれない。
最近ふと思う。ひと昔の生活をすれば色々とうまくいくのではないかと。 -
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著者の明治生まれの実母・テイが米寿を過ぎて語り始めた話を聞書きした女の一代記。
養女に出され労働力として働かされた辛い幼少期からのおよそ100年間を、1人の少女の目線で当時の農家の生活や四季折々の涎の出そうな手の込んだ伝統食や風景が鮮やかに描かれた歳時記。
これ、実録版「おしん」ですよ。
かつ文章は松本清張や土門拳と仕事し、プルースト「失われた時を求めて」を担当した名編集者と名高い著者の、まざまざと頭にイメージが浮かぶ流麗な名文!
後年成長し勉強がしたい、と働きながら苦学し就職もするテイ。
学校に行き知識を得る、
そんなことが女にはとんでもなくハードルの高い時代。女は労働力としてしか扱 -
Posted by ブクログ
創作じゃなくて実話で、かつ電気もないガスもない日本の田舎で生きていた人の暮らしがよくわかる話でした。
朝ドラみたいだ。
食べ物の描写は解説の方も書いていた通りとても美味しそうに表現していて、出てくる人物たちもみんな個性的。おばあさんとおっかさんが好きだけど、嫁っていうものを、このおっかさんはきっぱりと言い切っていたけど、私はちょっとそんな風には思えないなーと。すごいいいおばあちゃんだけどね。でもだからこそそう思えるんだよね。
確かに民俗学の本としても価値がありそうだとは思いました。
「母親がいなかった」ということが、最後まで残り続けてたっていうのにはちょっと気持ちが重たくなりました。