久保恵美子の作品一覧
「久保恵美子」の「アダム・スミスはブレグジットを支持するか? 12人の偉大な経済学者と考える現代の課題」「10万年の世界経済史」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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ビジネス・実用
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Posted by ブクログ
本書はハーバード・ビジネス・スクール(HBS)のBGIE(Business, Government, and International Economy)というモジュールで使われている本になります。HBSで使われているということは、これからビジネス界に入る人(MBA)、あるいはすでにビジネス界でそれなりの役職についている人(エグゼクティブ)が読む本になるわけですが、章によっては多少難解な箇所もありましたが、全般的に言えば、そのような対象読者向けの本としてはわかりやすく書いてあると思います。何より一番好感が持てたのは、様々なマクロ経済指標(金利、インフレ率、為替レート、マネーサプライ)の関係性をひもときながら、最終的にはその因果関係は複雑でわからない、と正直に書いてあることです。ただし、白旗を上げているのではなく、むしろロジカルに(分析対象指標の)押し上げ要因と押し下げ要因の両方があることを示し、結果として(その分析対象指標が)どう変化するかはわからない、という記述をされています。これが巷の経済入門書との最大の違いでしょう。
日本でもマクロ経済入門なる本が多数出ていますが、この指標が変わると別の指標はこう変わる、と断言している記述が多く見られます。そしてビジネスマンの立場からすると、「そんなに世の中単純ではないし、この著者は現実世界を直視していないのか?」と思うことも度々ありました。書かれていることは物事の一面にしか過ぎず、コインの片方だけを見て全部を見たように記述しているにすぎません。本書でも最後の方に、「マクロ経済学は謙虚な学問でなければならない」と書かれていますが、まさにそのようなスタンスで本書は書かれていると思います。本書、ビジネスに関わっている人であれば、ぜひ手元に置いておいたらよいかと思いました。
Posted by ブクログ
ミクロ経済学、経済成長理論、数量経済学を駆使した新石器(農業)革命以降とそれ以前を含む経済史。モデルによる単純化により明確になるところはあるが割り切り過ぎ。農業革命以降1800年ごろまで、一人当たり所得水準は、狩猟採集時代よりむしろ低下した。産業革命により一部の国の所得水準が急速に増大したが、一部の国は逆に下がった。所得水準が伸びなかった理由はマルサスの罠による。
・産業革命は均衡状態の転換ではなく徐々に進んだものであり、制度的要因だけでは説明できない。産業革命ではなく産業化。イングランドにおける14世紀から18世紀にかけて出生率が低かったこと、そのなかで富裕層の出生率が極めて高く階層低下により中産階級的価値観が社会に浸透したことなどの要因。
・産業化以前は、土地が重要な生産要素であり土地一定の下では収穫逓減。これにより人口と人口一人当たり所得とがトレードオフに。出生率と死亡率が均衡する一人当たり最低生活水準所得を上回ると人口が増加、人口が増加すると一人当たり所得が減り均衡点に収束。最低生活水準を下回った(人口が減少した)ときは逆の過程で均衡点に。したがって長期的にはマルサス均衡になる。
技術進歩により人口・一人当たり所得曲線が上昇すると、人口が増大するが、いずれ人口増大は一人当たり所得の低下をもたらし、人口増大したうえでの新たな均衡点に。
・イングランドでは、1349ペスト流行から15世紀半ばまで賃金が上昇、その後下降し18世紀に微増。食費の小児から見ると1800年の生活水準は2000年の第三世界の水準よりはるかに高い。
・狩猟採集社会の方が身長が高く労働時間ははるかに短い。
・生物的出生数よりも北西ヨーロッパ、中国・日本は出生数が低い。前者は晩婚と未婚の女性、後者は未婚の男性と中国は女児の間引きによる性差の偏り。
・イングランドでは所得と出生数には強い相関があり、常に階層の下方化が進んだ。
・17世紀のオランダ、18世紀のイングランドは所得が最低水準以上に上昇したが低減し収束しなかった。これは死亡率が高かったことによる(オランダは都市化と海外交易・植民、イングランドは都市化)。
・1800年までの技術進歩は緩慢、コブ・ダグラス生産関数による推計では西欧における0年から1800年までの技術進歩による土地生産性の向上は24%に過ぎない。
・中世の制度は現代の制度と身体の保護、財産保障、財・労働・土地の自由市場等の面で大きな差異はない。物価の安定、税率の低さでは中世の方が高い。
・1800年頃からの急速な一人当たり所得の上昇の要因のうち3/4は全要素生産性ー技術革新によるもの。
・産業化に要因の一つは18世紀半ばからの人口急増(妊婦死亡率の低下と女性初婚年齢の低下、新大陸の農産物)
・18世紀後半の日本や長江デルタ地域は、多くの点でイングランドより下回るものの産業化の基盤ができつつあるようにみえる。しかし、日本の武士階級、中国の満州貴族の出生率は高くなく階層低下はあまりおこらず中産階級意識の普及もなかった。
・産業化により労働所得への分配率は向上したが、これは地代が低下したことによる。所得格差も縮小。
・出生率は上昇し人口は急増、イングランドの人口転換点は1890年頃。
・一国内の所得格差は縮小したが、国の間の所得格差は大きく拡大。この大きな要因は労働者の質の差。
以上を踏まえ、日本のテークオフを整理すると、18世紀以降人口が増加しなかったため(都市化、初婚年齢の上昇、間引き?)、一人当たり所得が向上、勤勉革命とも相まって中産階級意識(勤勉、識字等)が普及し労働者の質の基盤ができた。