朝日新聞国際報道部の作品一覧
「朝日新聞国際報道部」の「プーチンの実像 孤高の「皇帝(ツァーリ)」の知られざる真実」「プーチンの実像 証言で暴く「皇帝」の素顔」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
ネット上には真偽のほどが定かではないプーチン伝説が溢れている。
例え9割がデマだとしても「プーチンならありえる」と納得してしまうこ
ともしばしばだ。
ただ、本書はそんなプーチン伝説ではなくとっても真面目な評伝だ。
実際にプーチンを知る人々の証言を集め、朝日新聞朝刊に連載さ
れた記事に大幅加筆して書籍化された。
連載中も毎回楽しみに読んでいたのだが、こうして1冊の本にまとまる
とロシア大統領プーチンという人はとことん興味深い人物だ。
KGBの元スパイ。スパイ好きの私にはこれだけでも興味をそそる存在
なのだが、政治経験ゼロで大統領にまでなってしまったのだもの。
KGB時代は決して優秀なスパイだったのではない。派遣されていたの
は旧東ドイツのドレスデン。そこで東ドイツの崩壊に立ち会った。
故郷サンクトペテルブルクへ戻り、サプチャーク市長の下で第一副首相
を務めていた時にソ連が崩壊した。このふたつの国の崩壊に立ち会った
ことが大きな影響を与えたのかもしれない。
ただ、KGB時代、共産主義には批判的であり、サンクトペテルブルク時代
には西側の銀行などを誘致し、市場開放には積極的だった。
夢見たのは西欧型の自由経済。だが、国家が転覆するのだけは我慢が
ならない。そんなところか。だから、プーチンがやろうとしているのは決して
ソ連の復活ではなく、あくまでも「強いロシア」なのだ。
それは「世界一のお金持ち」と言われたロマノフ朝への回帰と見るのは
蝶々うがった見方かもしれないけれど、プーチンは「大統領」と呼ぶより
「皇帝(ツァーリ)」と呼ぶ方がふさわしいような気がする。実際、私は
普段「閣下」と呼んでるしね。
それにしても本書で証言している人たちのプーチンに対する意見が
極端に割れているのはおもしろい。とことん批判的な人、とことん好意的
な人ってなっている。
これもどの視点で見るかで変わって来るのではないかな。アメリカ寄りの
視点だと「独裁者、悪魔」になるのだろうし、ロシア視点では「救世主であ
り、頼りになる大統領」だろうしね。未だ80%という高支持率を誇っている
のだから。尚、ロシア・メディアが骨抜きにされている件は問題だけど。
元々が新聞記事なので一般的なプーチン入門というところだね。これまで
もプーチン関連の作品を読んでいる人には物足りないかもだけれど、彼
のこれまでの足跡を追うにはいい。
尚、何故プーチンが森喜朗がお気に入りなのか謎だったのだけれど、
森喜朗のお父様が日本とロシアの友好に尽力し、ロシアに分骨され
ているとのエピソードが閣下のお気に召したらしい。一緒にお墓参りを
している写真が本書にも掲載されていた。
森喜朗は好きではないが、プーチンに率直にものを言えるところは見直し
たわ。そういえば、以前、サンクトペテルブルクにアイスホッケーの世界
選手権を見に行った時、VIP席にプーチンと並んで森喜朗が座っていた。
「こら~、森~。その席、私と替われ」と叫んでいたことは内緒である。
Posted by ブクログ
KGB、サンクトペテルブルク副市長を経て、その後一気に権力の階段を駆け上り、2000年から現在に至るまでロシアのトップに君臨し続ける、プーチンの人間像(原体験、人柄、交渉術、思考等々)を明らかにする。
プーチンに対して肯定的であるか否定的であるかを問わず、プーチンを直接知る人物らの証言がベースとなっており、全体としてバランスの取れた内容になっている。
プーチン自身が非凡な頭脳を持っていることに疑いはないだろう。
しかし、プーチン長期政権の下で、ロシア政治の権威主義化が進み、「制度化されていない専制国家」に立ち至っているという現状は、かなり危ういものがあると感じられた。
最終部から先は、近時の対日・対中関係について触れられているが、いずれにしても先行きは不透明という印象が強い。
2016年12月、プーチン来日がようやく実現したが、依然として光明は見えないように思われる。
ロシアのみならず、世界情勢を理解する上でも有用な一冊。
Posted by ブクログ
KGBからロシア大統領に就任したプーチンの実態に迫る。プーチンは幼少期に見た映画の影響でスパイに興味を持ちはじめ、KGBの支部に直接訪れたことがある。しかし、そのときに言われたのが、自分から志願して採用された者はいないと注意された。その代わり、大学を卒業する、とくに法学部出身なら有利だと言われたので、レニングラード国立大学を目指して、実際に進学して卒業した。その後、KGBの職員から連絡が入り、晴れてKGBの一員となり、東ドイツに配属されたが、本書には興味深い点がある。KGBはソ連共産党員であることが必須であるが、プーチンは私有財産や相続権を認めるべきだと考えており、思想的に共産主義には染まっていなかった。またプーチンは周囲から魅力的な、とりわけ年長者に好かれる人物で、その性格が大統領選挙勝利の要因の一つだと指摘されている。大統領に就任してからは、権力を掌握するために、石油、ガスといった資源産業をおさえた。外交面においては、相手がもし初対面である場合、その人物の家族の情報をあらかじめ把握する、またその国の貿易高やその分野の変化や協力具合などを資料がなくても頭の中に入れている。このようにプーチン政権の基盤は盤石であるが、その反面独裁色を帯びている。本書でインタビューを受けたプーチンの知人によると、現代のロシアの権力構造は、プーチン個人によるソフトな全体主義だという。