<漫画の概要・良さ>
魔法が存在するパラレルワールドのお話。一応舞台は日本の東京。
この世界の魔法遣いの特殊なところは、ほとんどの魔法使いが魔法を使って人の悩みを解決する、一種の特別職公務員(?)になるところ。
といってもこの世界の魔法では金銭は出せないし(天才だけは出来るけど、法律上禁止
...続きを読むされている)、医療も出来ないし、思考盗聴も不完全という、結構地味なもの。
そのせいで、この世界の魔法遣いは「その人の話をよく聞かないと巧く魔法が成功しない」という現実世界における対人援助職のような立場にある。
この世界の魔法遣いは依頼者の心に向き合い、未来に立ち止まってしまった依頼者に再び歩き出す力を与えるのがお仕事である。
そのせいか、研修指導員の小山田が「依頼者にいつまでも心を残してはいけない」などとフロイトのようなことを言ったりする。福祉や心理など、対人援助に関心がある人なら、彼らの発言の中から重要なメッセージをいくつも見出すことが出来るだろう。
<ストーリーの概要>
主人公の菊池ユメは魔法の力も強く、人の心も解る高い能力を持つ魔法使いであり、時には失敗しながらも、依頼人をみな満足させ、未来に向かって歩き出す力を与えていく。
しかしこの巻の最後で、依頼人の老女は再び歩き出した結果として「死」を選ぶ。
(ここから2巻)ユメはそれを受け止められず、その後魔法がまったく成功しなくなってしまう。
ユメは研修をリタイアし、故郷の遠野に戻るがそこで病気により後半年の命の幼馴染、文華と出会うことにより、老女が「歩き出した結果として死を選んだ」ことを受け止めることが出来、再び魔法が使えるようになる。
東京に戻ったユメは、恋人を失ってから死んだように生きていた小山田指導員に「もし生き残ったのが多佳子だったら」「死んだように生きている」多佳子の姿を小山田に見せ、本当に多佳子の伝えたかった言葉を伝えるという魔法をかけ、小山田を立ち直らせて卒業試験に合格する、ユメの成長ストーリー。
<アニメ版との違い>
ストーリーはマンガ版のほうがいいと思うが、展開が急なのがたまにキズ。そのため、設定のどこかほんわかした雰囲気はアニメ版のほうが上手く出ていると思う。アニメ版は老女の描き方とユメの卒業試験の描き方が違い、そのせいで肝心のメッセージの説得力がなくなってしまっているように思う。
よしずきくみちのマンガ、ヴューワークス・J.C.STAFFによるアニメはまあどちらも良い出来だと思う。羽毛田丈史担当のBGMは良い感じ。主演の宮崎あおいは好き嫌いがあるけれど、最後まで見た方は大抵慣れるようである。
どっちにもそれぞれ良い点があるけれど、個人的にはマンガのほうがいいと思っている。