世界を破壊する怪物とそれを守る力を持った少女と見守る少年。
ラノベ界でよくある形であったセカイ系のアンチテーゼの物語である。
そもそもセカイ系が男が迷いなく戦いヒロインを助ける物語のアンチテーゼであり、それのさらなるアンチテーゼと化したこの作品は恋心というか超常そのものへのアンチを投げかけている
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しかし、メタフィクションへと完全に移行させるのは嫌っているようで、主人公が亡霊のように死人に対する葛藤を引きずる部分は今作をフィクションとして成り立たせている。
世界を護る可愛い美少女というヒロインに欠点(家族殺し)があっても主人公は恋せねばならないのだろうか。結局世界の滅亡をかけた現実感のない世界で恋愛だけが真実で上手くいくのだろうか。
メチャクチャだがテンポ良い文章でスラスラと難解なく読める。この作品はテンプレな展開とキャラを途中まで護りながら、最後に放り出すオチで綺麗に締めている。この作品がメタ要素込みで茶化し続けていたのはラストのオリジナルのためだったのだろう。
結局恋というものは空想で美化されており、物語ではこれまでもこれからも愛されて使われ続けるものだ。だが、その原点にはラノベのみならず全ての小説を読む読者(この場合は男であるが)が望む「可愛い美少女と出会いたい」という願望があるはずだ。
そう考えると今作は「エヴァンゲリオン」やらから続く現実での恋を応援しているのかもしれない。