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5月のクソ暑い日、ど田舎の駅のホームで世界一可愛い女と出会った。次の日、夕方に目覚めると家族が殺されていた。親父、かーちゃん、兄貴、妹、じじぃ。全員だった。そんで、そこには金属バットを持ったあの世界一可愛い女が立っていた。驚くことにそいつは『試験官』っていう世界を滅ぼす化け物から人類を救う選ばれた女って話だった。
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理想と現実で揺れた意欲作
世界を破壊する怪物とそれを守る力を持った少女と見守る少年。 ラノベ界でよくある形であったセカイ系のアンチテーゼの物語である。 そもそもセカイ系が男が迷いなく戦いヒロインを助ける物語のアンチテーゼであり、それのさらなるアンチテーゼと化したこの作品は恋心というか超常そのものへのアンチを投げかけている...続きを読む。 しかし、メタフィクションへと完全に移行させるのは嫌っているようで、主人公が亡霊のように死人に対する葛藤を引きずる部分は今作をフィクションとして成り立たせている。 世界を護る可愛い美少女というヒロインに欠点(家族殺し)があっても主人公は恋せねばならないのだろうか。結局世界の滅亡をかけた現実感のない世界で恋愛だけが真実で上手くいくのだろうか。 メチャクチャだがテンポ良い文章でスラスラと難解なく読める。この作品はテンプレな展開とキャラを途中まで護りながら、最後に放り出すオチで綺麗に締めている。この作品がメタ要素込みで茶化し続けていたのはラストのオリジナルのためだったのだろう。 結局恋というものは空想で美化されており、物語ではこれまでもこれからも愛されて使われ続けるものだ。だが、その原点にはラノベのみならず全ての小説を読む読者(この場合は男であるが)が望む「可愛い美少女と出会いたい」という願望があるはずだ。 そう考えると今作は「エヴァンゲリオン」やらから続く現実での恋を応援しているのかもしれない。
Posted by ブクログ 2019年05月28日
平々凡々な人間が現実離れした特殊なヒロインと出会っても、何の物語も生まれない事を200ページ使って説明した意欲的な作品。ジャンルはいわばセカイ系に属するもので、「試験官」と呼ばれる謎の怪物の脅威に怯える世界……は一切描写されず、中間世界をすっ飛ばし、ただひたすら殺戮系メンヘラヒロインと平凡な主人公の...続きを読む生活が延々と続く。波乱も起伏もなく、時折クソガキと呼ばれる超得した存在がメタフィクショナルに茶々をいれるものの、基本的には何も起こらず、主人公二人は騒動の渦中にいながらにして無関係という、虚無的な立ち位置のまま話は進んでいく。ラノベ読者にありがちな妄想をそのまま文章に起こしつつ、ただ現実化しただけではひどく奇妙でおぞましく、歪なものになることを表現したという、いわば実験作のような作品であり、ラノベとしての異様なつまらなさや破綻した箇所も、ある意味では計算のうちなのだろう。ラノベという体裁で出したセカイ系文学といったほうが正確かもしれない。主人公二人の人物造形もかなり現代的で、家族や現実に対する執着の薄さや、目の前の異性に対する感情、他人に対する冷えた感情など、セカイ系作品のテンプレート的キャラクターではあるものの、おおよそ物語のキャラクターらしくなく、ヒロインは特殊な力があるものの、文字通りその力のみでギリギリキャラクターとして成り立っているという有様である。特殊な世界、特殊な関係に置かれても物語の主人公にはなれないかもしれないという問いを突きつけている作品。舞城王太郎っぽさもちょっとだけ感じた。作品はともかく試みは興味深かった。
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