«「向くこと」と「やりたいこと」に向き合う»
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「ボートって楽しそう!」
主人公の飯塚有里が高校に入って何の気なしに始めたボートの面白さに惹かれ始め、仲間と共にボート競技に打ち込んでいく姿を描いたこちらのお話。
有里の心情だけでなく、水の音やボートを漕ぐ感覚までもが伝わって来
...続きを読むそうなほど臨場感のある描写が魅力的なこちらのお話を初めて読んだ時、私はボートの魅力に惹かれ、面白そうだな、自分もやってみたいなと胸を高鳴らせた記憶があります。
しかし今回あらためて読み返した時、それ以上に印象に残ったのは、「時間の使い方」や「挫折、そして向いていないことへの向き合い方」でした。
「継続は力なり」「好きこそもののじょうずなれ」という言葉に代表されるように、「とにかく続けてみること」が良いことだと考える人は多そうですが、頑張っても上手くいかないことがあるのもまた事実。また、忙しい毎日では、やりたくても時間の関係で同時並行出来ないことが出てくるのもまた事実。
恋に部活、勉強に、遊びに、また人によってはアルバイトにと、自分の世界が広がってくる高校生の時期、こういった問題が出てきた時にどう対処していくかに焦点を当てた作品でもあるのだなと感じました。
初めて読んだ時には有里の心情や行動ばかりに注目していた気がしますが、有里達と同じ高校生の時期にこの「向き不向き」と「優先度」の選択肢にきちんと向き合えなかったという経験をした今は、高校1年生の時点できちんと自分の気持ちに折り合いをつけて部活をやめた麗花や、自分の適正ポジションを見極めた祥子、瑠璃子、美帆の姿がとても大人びて、そして眩しく見えました。
また、「恋に恋するお年頃」などと言われるくらい恋人ができることにワクワクしがちな高校生の時期に、芳一と付き合うことにこだわるのではなく、自分の気持ちに折り合いをつけてボートに時間を使うことを選択出来た有里もとても立派だと思います。
やりたいことや目標を諦めないことももちろん大切だと思いますが、やっていく中で自分の向き不向きや優先したいことときちんと向き合い、続けること、諦めることの取捨選択を重ねていくことも大切なんだなとあらためて感じました。