坂本光司さんは60万部を突破した「日本でいちばん大切にしたい会社」の著者で、
日々共感と感動を生みだす12の会社の物語が集められた一冊です。
「日本で一番大切にしたい会社」は3巻まで出ていますが、
この本では今までの"事例紹介"だけにとどまっていません。
コラムとして「なぜこの会社が人を幸せにして
...続きを読むいる会社なのか」ということを、
客観的な情報を交えて一段階掘り下げている内容となっています。
■「目に見えない企業資源」を大切にしているパン屋さん
ヤマトホールディングスの特例子会社で、
パンを製造・販売する「スワンベーカリー」という会社があります。
この会社では「目に見えない経営資源」を大切にしています。
スワンベーカリーに勤める精神障がいのあるK子さんは、
以前の職場では「無理しないで、いつでも休んで良いよ」と言われていました。
ところがスワンベーカリーでは障がい者も貴重な戦力として捉えていて、
お店の営業時間に合わせてシフトを組んでいるためそういうわけにはいきません。
働き始めた時に「貴重な戦力なので無断で休むことは絶対にやめてください」と言われ、
K子さんはそれまでの会社での勤務と違い、
無断で休むことが無くなり働きがいを見つけました。
また、菓子箱作りのまかされたT君は3ヶ月ものあいだ箱に触ることすら出来ませんでした。
それでも周囲の人は手助けすること無く、
ただひたすら箱作りを根気づよく教え続けてT君が自主的に働きだすのを待ちました。
T君は3ヶ月と1日目に箱に触り、
2日目で箱をたたき始め、
3日目からは猛然と箱を作り始めました。
スワンベーカリーでは働く一人一人に居場所を与え、
人こそ会社の経営資源だと捉えて、
「認めて、信じて、支え続ける」という経営姿勢を貫いています。
■他にも感動を呼ぶ会社が登場
スワンベーカリーのような障がい者雇用の特例子会社ばかりではなく、
他にも様々な企業が紹介されています。
共通しているのは「働く人を中心に考えている」ということであり、
「働くということはどういうことなんだろう」ということを考えさせてくれるという点です。
利益を上げて株主に還元しようということではなく、
まずは従業員のやりがいと生活があって、
そこに付随して売上げや会社規模の拡大があるという姿勢が描かれています。
会社を運営するというのはこのような考え方ばかりでは成り立たないかもしれませんし、
このような考え方を貫いていては大きな会社にならないかもしれません。
しかし、そこには企業規模や株主ではなく「働く人のため」ということや、
「社会の中で必要とされる会社」というキーワードが見えてきます。
働くということはどういうことかということを、
今一度考えさせてくれる一冊だと思います。