前向きな青春恋愛ものとライトノベルの中間みたいな作風と文章と
どちらも好みでどう褒めたら良いか困る
P66より引用
豚は飛んでもただの豚だろ、と真宮は思う。たとえ努力して飛べるようになったところで豚である事実は変わらず、豚であった過去も飛べなかった過去も消えるわけではない。端から見れば豚のままだ
...続きを読む。他の豚との違いなんてありゃしない。たとえ飛べて変わった気にはなれたとしても、本当に変わることなど不可能だ。
真宮は自分の足元を見る。足を上げ、靴の裏を見る。そうしてまた足を戻した。
根は張っていなかったが、たとえ跳んでも同じ場所にしか着地しない気がした。
言っていることに感心するのでなく後半2行に対しての表現が素晴らしい
飛ぶと跳ぶの使い分けとかどうでも良いようなところが大切だ
P243より引用
がんばろうぜ、か。助かるな、これも。ありがてえ。
そこにはちゃんと「自分」も「相手」もいる気がした。自分が「がんばる」でもなく、相手に「がんばれ」でもなく、一緒に「がんばろうぜ」。そういうものだと真宮は感じた。本当のところはどうかなんて知らない。聞こうとも思わない。自分がそう感じ、そう受け取ったのだから、そうなのだ。
真宮はがんばろうと思った。具体的に何をかわからなかったが、おそらく何もかもを。とりあえずは今日を、がんばろうと。
いちいち言い回しが素晴らしい
同じ内容を言うのは青春という書き手も読み手も誰もが通る過程で思うことだが
それをここの一行目のように書きかく表現するのは難しい
作者のひとはなんでライトノベルなんだ
さらになぜゆえよりによってMF文庫に送ってしまったんだ
あまりに畑違いだ
とはじめ思ったが
既存のライトノベルではどのみちどこだってたいして違いはないし
ガガガ文庫あたりなら違ったかもしれないが弱小で埋もれるよりましだし
(まあ『わたしたちの田村くん』を出せる電撃文庫なら問題ないだろうけれど)
この作者ならどこで書こうと大成は間違いない
(注記:願望である 間違いないといって間違いのないことなどあまりないことに注意)
なんでも受け入れるライトノベルにきたのはまちがいでなかったのかもしれない
MF文庫は去年の『変態王子』と2年続けて傑物引き抜いてすごいが
おなじ「中高生を主人公とした恋愛喜劇というジャンルのライトノベル」(うん間違ってない)でも
方向の180°違う両端鋭角をきちんと評価しているのが
勢いだけではないところか