評価の高いインディーズ映画の監督自身によるノベライズ。
映画本編は素晴らしい出来だったがSHO-GUNGのメンバー構成をはじめとする舞台背景の説明不足が目立ち、人によっては消化不良な映画かと思うが、本作を読めばその不満も解消される。
著者は本作が初の小説とは思えない程文体がなめらかで非常に読みやす
...続きを読むく、映画で笑えるシーンも巧みな比喩表現で文としても笑わせているのがスゴイ。同じ映画監督が手掛けたノベライズと比べるのなら、僕の好きな新海誠監督よりも面白い文だと感じた。
内容も映画では語りきれていないSHO-GUNG結成の経緯や、高校の頃のイックとみひろ演じる千夏とのサイドストーリー、各キャラクターの人となりも事細かに描写していてこの小説だけで世界観が完成されている。単純な小説として楽しめるのだ。
カバーイラストは『デトロイトメタルシティ』の作者。彼もまた入江監督同様「ミュージシャンワナビーの愚かさ」と同時に「そこに宿る表現の尊さ」を描きそれをエンタメに消化した素晴らしい表現者の一人。
作り手の愛が伝わる素晴らしい一冊。