パリ五輪予選を勝ち抜いたバレーボール日本代表の勇者達。
絶対エース、若きプリンス、鉄壁の智大×2、素人集団!?のミドルブロッカー達、ヤンチャなノリノリオポジット、天才セッター、対照的なもう一人の無骨なオポジットに焦点を当てつつパリ五輪予選の7戦をコンパクトに振り返ると共に、彼らの軌跡を辿る。
中学校時代は中垣内祐一、アンドレア・ジャーニに憧れてバレー・ボールに打ち込んだ。
ちょうどその頃、先輩の一人が進んだ近くの高校が春高優勝を遂げたこともあり、とにかくバレーボールが大好きだった。
たしか、サーブゾーンがどこからでも良くなったのは自分が競技をしていた頃からだったはず。リベロというポジションができたり、ラリーポイント制になったりしたのは自分が辞めた後。
大したプレーができたわけではなかったけれど、身長が伸び悩んだのも辞めた理由のひとつだったのでリベロという道があったらまた違った部活の選択をしていた可能性もあるなぁと思いを馳せずにもいられない。
それほど好きだったのに注目を怠っていたのは否めない。
加藤、山本、越川、石島、清水とエース達の系譜はある程度わかるものの、成績低迷によりろくにテレビ放送もされず、グランドチャンピオンシップのときくらいしか日の目を浴びない扱いに、いつしか意識が同調してしまっていた。
「日本バレー界の最高傑作」、人を物のように評するこの言葉はどうなのと思いつつも、そのプレーを見ると最高意外の何でもない石川祐希の登場。
時をほぼ同じくして現れた上背こそないものの、そのパワーヒッターぶりに目が覚める思いのする柳田将洋。
この2人が共演し始めたことを機にじわじわと調子を上げ始めた日本男子バレー界。
2023年、ついに自力で五輪出場を決めるまでの力を得た。
何と言っても役者揃い。
石川、高橋藍、山本、小川、髙橋健太郎、山内、小野寺、西田、関田、宮浦。
誰を取っても代えがたい強味、特徴、プレースタイルを持っており、全員魅力的。全員好き。ここに柳田が居ないのが涙。
その中でも自分が一番代えがたいと思うのがセッター関田。
にわかファンも同然なので、それらしいことは全然言えないのだが、初めてあのトスワークを見た試合、「ヤバいセッターが出てきたぞ」と歓喜に震えた。
というような自分のボルテージの高まりを追従、後押しするような五輪本線を目前とした本書のルポタージュは、色々なこと(高橋藍の守備力が高い経緯、ミドル達の嘘だろと思うような出発点と結束力、五輪予選の経過の影に隠された関田の苦悩)が知れて興味深い反面、その後の結果も見えている2025年の「今」にはなかなかに辛い。
元々、五輪でロスを感じて手に取った本書にさらなるロスを感じる面もあった。
だがそんな喪失感以上に、本書で伝えられている細かな描写、心情、技術的駆け引きを読み、全然五輪を楽しめていなかったと後悔の念が高まった。
もっと細部までわかるようになりたい、もっとその痺れる場面を記憶しておきたい、もっと選手たちの歩んで来た道に共感したい。。
とにかくそんな熱い気持ちにさせられた。
次の五輪ではピークを越えてしまった選手もいるかもしれない。
敢えて代表の場から距離を置く選手もいるかもしれない。
あるいはノリにノったキャリアの真っ只中にいる選手もいるかもしれない。
そんなこんなも全部ひっくるめて、今回がだめでも次の4年間を共に追いたくなるような1冊だった。
本日2025年1月5日から春高バレー開幕。
準決勝までは、TV放映は毎日15分くらいのハイライトしかないけれど、その才能のカケラ、情熱のカケラを取りこぼしなく攫って行くぞー!