本書においても争点や議論のポイントについては説明されているが、「これこそが正しい」という結論などはほとんど提示されていない。それは答えを早急に求める読者にとっては受け入れられないことだろう。しかし、だからといってこのような議論が無駄なものであると結論づけるのは誤りである。本書の最後の部分で著者は次の
...続きを読むように述べている。
「しかし、明瞭に考え、本当に正しいと評価しているものに注意を向けることでより善い道徳的な選択、純粋により良い結果をもたらす道徳的な選択をする可能性が芽生えるのであれば、そこに、哲学的倫理学につながる点がある。
最終的な選択は、常にあなた自身が決めることであり、あなたしかその選択の責任を負うことはできない。しかも、責任を取るためには、それにふさわしい厳粛な時間と考えを、倫理醸成に与えることが欠かせないのである。」
つまり、最終的に判断するのは私たち自身なのである。しかし、その判断をするときに何も知らない状態で判断することと、論点を整理し熟慮した上で判断することでは、その意味合いは全く異なる。そのよりよい判断をするうえで助けとなるのが、「倫理」という学問なのであり、本書はその大まかなアウトラインを理解する上で大いに役に立つだろう。