スティーブ・コールの作品一覧
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ユーザーレビュー
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元ワシントンポスト記者による、エクソンモービルの物語。精緻な取材に基づく大作で、エクソンモービルの考え方や決断の経緯が理解できる。登場する人物は多彩で大物が多く、国家との関わりもよくわかる。巨大石油企業とはどういうものかを理解できた。
「原油流出に対応するために実行すると決めたことが正しいことであ
...続きを読むってもなくても、とにかく素早く実行しなければならない」p16
「エクソンは1919年ジョン・ロックフェラーの独占企業スタンダードオイルが解体されて生まれた。80年後の今もエクソン幹部たちがしばしばワシントンとの関わりを避け腹の底に敵意を抱いている理由は、この痛みが今も克服されていない、ということだった」p19
「エクソンが地元の政治や安全保障に対し及ぼす影響力はアメリカ大使館のそれを上回った」p19
「フォーチュン誌はエクソンを、エクソン・バルディーズ号の事故前にはアメリカ第6位の最も尊敬される企業に挙げていたが、事故後は110位に転落した」p33
「わが社は多額の補償金を払った。わが社は自発的に行動した。そしてわが社はいつまでも払い続けるわけにはいかない。わが社は言わなければならない、これで全部だ、と」p33
「スタンダード・オイルは、そのピーク時にはアメリカの市場の90%を支配していた」p35
「同業他社の幹部たちはエクソンの幹部たちを、情け容赦なく、孤立的で、不可解な、しかし同時に、ロックフェラーが拠り所としたプロテスタントの牧師補佐のように道徳的であるとみていた。「我々は煙草を吸わない。我々はガムを噛まない。これらを嗜む者とは付き合わない」」p36
「エクソンでは、手続きを強調し正統なものを重んじる文化があり、細部にこだわる者が卓越した権威を獲得した。エクソンの採用は、規則に抵抗感のない人々、喜んで生涯一つの会社に勤め、仕事のために転勤することを厭わない人々に偏った」p39
「規律ある結果を得るための唯一の方法は、やりすぎるくらい徹底することだ。つまり、机をたたき脅しをかけなければ、これだけ大規模な従業員たちは易きに流れ、凡庸な結果しか残せない」p46
「会社が縮んでいると見られないためには、毎年10億バレル以上の新規埋蔵量を発見し帳簿に載せていかなければならなかった」p55
「レイモンドは、国務省をエクソンモービルに協力的な政府機関とはみなしていなかった」p141
「(大使館からの報告)エクソンモービルなど一握りのアメリカ石油会社は、たいていの場合、業界固有の問題は自分たち自身で処理しようとする。もし彼らの努力だけで問題解決に至らず、もしくは問題が悪化した場合は、素早く我々に行動を求めてくる」p141
「OPECメンバー7カ国、アルジェリア、イラン、イラク、クウェート、リビア、カタールそしてUAE、いずれもが非民主的で、人権保護が貧弱で、経済的な多様性に乏しい。その他3カ国、インドネシア、ナイジェリア、ベネズエラについては、名目的に民主制ではあるが、広く腐敗し人権保障の貧弱な国々である。アンゴラ、アゼルバイジャン、カザフスタンは、腐敗、拙劣な統治、人権侵害のモデルになりつつある。エクソンモービルは、これらの多くの、人権保護が足りないと判断された各国で操業し、その政府に協力してきた」p220
「(オニール財務長官)資本は臆病者であり、資本は自分に冷たい場所には行こうとしない」p254
「アメリカが1日に消費する2000万バレルの石油のうち3/4は輸送用燃料だった」p307
「我々は常に正しい。ただ、我々は誤解されていたのだ」p335
「世界銀行の現地代表とは異なり、エクソンモービルのカントリーマネージャーたちは、チャドのデビー大統領の期待に上手く応えることができた。「彼らは最初に助けに来てくれた。問題がある時はいつも、腰を下ろし、議論に応じてくれる。彼らには我々以上の経験があると承知している。彼らがこの地に利益をもたらすために来てくれていることもわかっている。我々と彼らの利益は結びついている」p364
「裁判所は大統領の外交政策に軽々しく干渉すべきではない、という考え方は、アメリカの確立した法理となっている」p398
「エクソンモービルはどこにあってもその存在から生ずる影響について考慮しなければならない」p401
「(赤道ギニア)このような国で、政府高官やその親族とビジネスを行うことなく事業を展開することはほとんど不可能に近い。しかし、それでもなお、倫理的にビジネスを行いアメリカ法と地元法に従うことは可能である、と考える」p528
「世界の気候の将来を決定付ける要素としては、中国の産業化のような変革の方が、コペンハーゲンで行われたような会議よりもはるかに意味がある、とエクソンモービルのアナリストは結論付けた」p550
「新たな石油を発見しようという意欲が、あらゆる大手石油会社をリスクの高いフロンティアへと駆り立てた。資源ナショナリズム、特権的に保護された国営石油会社の台頭、そしてエクソンモービルのような超巨大会社の埋蔵量リプレースの苦闘、これらすべてが彼らを、大水深へ、あるいは悲惨な紛争にまみれた弱い国々へ、そして低温が従来型の流出除去方法を無効にしてしまう北極海へと導いた」p609
Posted by ブクログ
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[純私的巨像]民間石油会社として世界最強とも言える規模と能力を誇るエクソンモービル。とてつもなく巨大なこの「帝国」が20世紀末から21世紀初頭にかけて、世界中でどのような活動を行ってきたかを、徹底的な調査に基づいてまとめた作品です。著者は、ピューリッツァー賞を複数回受賞しているスティーブ・コール。訳
...続きを読む者は、帝石で自らも石油事業に関わった経験を有する森義雅。原題は、『Private Empire -Exxonmobil and American Power-』。
とにかくスケールがデカく、あらゆる照射角からの精読に耐える一冊。比類なき国際資本が世界情勢にどのように影響を及ぼすかの一端が垣間見えるとともに、石油をはじめとする天然資源をめぐる人間ドラマの数々にしばし呆然とさせられました。エクソンモービルが何故にトップランナーでいられるのかについても言及がなされており、その分厚さにたじろいでしまいそうになりますが、ぜひエネルギーに興味のある方にはオススメしたい良書です。
エクソンモービルとアメリカ政府の距離感に関する指摘も非常に興味をそそられる点でした。最低でも数十年単位で経営を考えている同社にとって、選挙の影響等から数年単位で政策が変わりうるアメリカ政府は、大筋において信頼足りうるパートナーであり、ときに「救世主」であるものの、決定的に同社の根幹に関わる件では違う道を歩むことができるという点が強く印象に残りました。そしてその「違う道を歩むことができる」というところに帝国と称しても遜色ない力が表れているように思います。
〜エクソンモービルは、世界のどこにおいても自分たちのルールは自分たちで書くのである。〜
大著の翻訳、本当にお疲れさまでした☆5つ
Posted by ブクログ
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例えば、テレビ局がこの本のどれか一つの章を取り上げたとしたら、それだけで少なくとも一時間の特別番組を制作できる筈だと思う。もしそんな番組が制作されるのなら、出来ればそれを会計帳簿上の数字や組織の上に立つ人々の視点からではなく、現場で働く者たちの視点から描いて欲しい。この本に描かれている世界の一部に身
...続きを読むを置いて来た者としては切にそう願う。この業界が米国のみならず日本でも人々から好意を持って受け止められていないと認識しつつ、それでも国内のエネルギー供給の一助になればと思いながら、文字通り汗と泥にまみれて働いているもののことを身近に知るものとしては。オイルショックの記憶のない世代、それは居間の照明が裸電球であったことも、集合住宅の最上階に住む友達をコンクリートむき出しの階段を登って訪ねたこともない世代、更に言えばテレビに色が着いたときの感動を知らぬ世代だとも言える世代が、居心地の良い部屋のソファーでぬくぬくとテレビを観ながら好き勝手言えるのも日本にエネルギーを届けたいという気持ちがある人々がいるからなのだということを、ほんの少しでも解ってもらいたい。
もちろんジャーナリストとして対象を批判的な立場で眺め取り組むことは重要であると思う。けれど、エクソンモービルの本当の凄さは、この本の中心で描かれているテキサスやワシントンの大物たちの中だけにあるのではなく、過酷な現場で働く人々の中にこそあるのだということが、石油のことを余り知らない人々にも伝わるようにも描かれていたなら、と少し残念に思う。例えば、ダニエル・ヤーギンの「石油の世紀」は、本書以上の大部な上に取り扱っていた時代も広範囲だったけれど、視野が多角的で躍動感があり、初めての海外赴任で石油開発の前線に携わり始めた頃に読んだせいもあるが、身に沁み始めたこの業界の巨大さを噛み締めつつ、わくわくしながら読んだ記憶がある。けれど、残念ながら、本書は、これを読んでこの業界で働いてやろうと思う人々を沢山生み出すとは思えない。山崎豊子の「不毛地帯」を読んでやりがいを感じた記憶が、執拗に本書に対して批判的な感情を喚起する。
とは言え、本書のような大部の石油業界にまつわる本が出版されるということは良いことだと素直に思うし、次々とこのような本が世に出てくるアメリカという国は、やはり石油に対する一般市民の関心が高い国なのだなとも思う。日本における石油会社のイメージは実に偏っていて、今は横文字の名前の会社ばかりになった日本の石油会社だって、利益の大半はガソリンを売ることではなく、掘って探し当てた石油を生産して販売する部門が支えていることを知っている人の数は少ないだろう。例えばエクソンという会社がガソリンを売る以外に何をしている会社であるかを知る人の割合は、日本では極端に小さいだろうけれど、アメリカでは石油を生産して儲けていることはもう少し知られているからこそ、原油高の恩恵を受けている石油会社からもっと税金を取れという議論にもなるのだろう。それでもこのような啓蒙書のようなものが出版されるということは、やはり石油会社の実態というのは謎めいているものだなと改めて認識する。あからさまに言及されてはいないが、ロックフェラーという名前が喚起する陰謀めいたイメージが、拭い去り難く存在するのだろう。
確かに、エクソンという会社は昔から何か得体の知れない会社であるというのが業界での一般的な印象で、そこに働く従業員たちも決して楽しげな人々ばかりではないことも事実だと思うけれど、このスケールでプロフェショナリズムを徹底している組織が稀有であることもまた事実だと思うし、そこのところは素直に称賛されて然るべきだと思う。本書でも、ある一面での彼らの徹底ぶりは描かれているとは思うけれど、もう少し負の印象に結びつかない部分の彼らの凄さが描かれても良かったのにとも思う。もっとも、本書に描かれているエクソンモービルという恐るべき規模の会社の徹底ぶりは、想像していた以上のものであったこともまた事実だけれども。
Posted by ブクログ
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国際NEWSで目にした出来事の背景はこうだったのか。国家よりも大きな企業が国家を相手に交渉して工作して仕事を進めていく。スケールが違う。
国際線の機内で読むと、より気持ちが入り込みます。
Posted by ブクログ
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600ページを超える大著である。アメリカを代表する大企業で、世界一を競う会社であるエクソンモービル社の社史とも言うべき内容で、1989年のアラスカでの原油流出事故から現在までの同社のさまざまな事件やトラブルなどの出来事を時系列に28章に分けて描いたものである。
1章分の出来事でも1社長の任期かけ
...続きを読むて対応するような大ごとばかりであるが、実質二人のCEOの時代の出来事である。
エクソンは世界中で原油を生産しているため、政治や紛争などとの関わりも濃い。強固な意志を持つリーダーに率いられたゆえに、それらの困難を乗り越えて業界に君臨できたのが示される。これは利益維持や対敵姿勢だけではなく、事故防止などにもあてはまる。
米国政府よりもしっかりした経営哲学を有し、それを頑なに実践する強さが、本書の題名に現れている。恐ろしいほどの会社である。
Posted by ブクログ
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