スティーブ・コールのレビュー一覧
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元ワシントンポスト記者による、エクソンモービルの物語。精緻な取材に基づく大作で、エクソンモービルの考え方や決断の経緯が理解できる。登場する人物は多彩で大物が多く、国家との関わりもよくわかる。巨大石油企業とはどういうものかを理解できた。
「原油流出に対応するために実行すると決めたことが正しいことであってもなくても、とにかく素早く実行しなければならない」p16
「エクソンは1919年ジョン・ロックフェラーの独占企業スタンダードオイルが解体されて生まれた。80年後の今もエクソン幹部たちがしばしばワシントンとの関わりを避け腹の底に敵意を抱いている理由は、この痛みが今も克服されていない、ということだっ -
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[純私的巨像]民間石油会社として世界最強とも言える規模と能力を誇るエクソンモービル。とてつもなく巨大なこの「帝国」が20世紀末から21世紀初頭にかけて、世界中でどのような活動を行ってきたかを、徹底的な調査に基づいてまとめた作品です。著者は、ピューリッツァー賞を複数回受賞しているスティーブ・コール。訳者は、帝石で自らも石油事業に関わった経験を有する森義雅。原題は、『Private Empire -Exxonmobil and American Power-』。
とにかくスケールがデカく、あらゆる照射角からの精読に耐える一冊。比類なき国際資本が世界情勢にどのように影響を及ぼすかの一端が垣間見え -
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例えば、テレビ局がこの本のどれか一つの章を取り上げたとしたら、それだけで少なくとも一時間の特別番組を制作できる筈だと思う。もしそんな番組が制作されるのなら、出来ればそれを会計帳簿上の数字や組織の上に立つ人々の視点からではなく、現場で働く者たちの視点から描いて欲しい。この本に描かれている世界の一部に身を置いて来た者としては切にそう願う。この業界が米国のみならず日本でも人々から好意を持って受け止められていないと認識しつつ、それでも国内のエネルギー供給の一助になればと思いながら、文字通り汗と泥にまみれて働いているもののことを身近に知るものとしては。オイルショックの記憶のない世代、それは居間の照明が裸
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600ページを超える大著である。アメリカを代表する大企業で、世界一を競う会社であるエクソンモービル社の社史とも言うべき内容で、1989年のアラスカでの原油流出事故から現在までの同社のさまざまな事件やトラブルなどの出来事を時系列に28章に分けて描いたものである。
1章分の出来事でも1社長の任期かけて対応するような大ごとばかりであるが、実質二人のCEOの時代の出来事である。
エクソンは世界中で原油を生産しているため、政治や紛争などとの関わりも濃い。強固な意志を持つリーダーに率いられたゆえに、それらの困難を乗り越えて業界に君臨できたのが示される。これは利益維持や対敵姿勢だけではなく、事故防止な -
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エクソンモービルという巨大な石油企業のことがダラダラダラダラ読める(笑)シェールガス以降、状況は大きく変わったのでほとんどが大昔の話にはなるが、同社が世界経済、政治にあまりに大きい影響を及ぼして来たことがわかるので読んでおくべき!
埋蔵量リプレースを維持しないと金融市場での評価が下がるため、油田開発を止められない同社。インドネシアのアチェや赤道ギニア、ナイジェリア、ベネスエラ、ロシアなど問題だらけの国でも資源があるなら乗り込んで行く。
座礁事件や誘拐事件を通して危機管理、社員の健康管理に過敏になった同社ではオフィスでの小さな切り傷にも報告が必要になり、危険な趣味は上司からの苦言の対象になる。( -
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エクソンの30年前のアラスカでの原油流出事件からスタートし、モービルとの合併、Bpのメキシコ湾の事故までの道のりを淡々と俯瞰する。
経営的には、利益率の向上と埋蔵量の増大が中心に据えられてきた。そのせいで流出事件はおこったが、そこで学んだことにより、BPとは違う緻密な企業文化が確立した。一方その文化は閉鎖的なもので、地球温暖化に対する否定的な態度(一方BPはBeyondPetroleumとまでコピーを作った)、フロンティア諸国での政治や軍との癒着や非合法的な活動の疑いが分かる範囲で記載される。一方政治との結びつきはアメリカでは限定的なようでズブズブという印象は持たないが要所要所でロビー活動やチ -
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昨年末(2014)に本屋さんでかなり分厚目の翻訳本を見つけました。値段も高くて少し迷いましたが、この本の主題は、私がかつて勤務していた会社と深い繋がりがあるものであったので読むことにしました。
本国の米国においてもこの会社について書かれた本はいままで無かった様で、丁度良い時期にこの本に巡り合うことができて感謝しています。
私が印象に残ったポイントは、長い間トップに君臨したレイモンド氏が強い財務体質を作り上げたこと、エクソンがモービルと合併したことで思わぬ苦労をしたこと、今流行っているシェールガス・オイルの開発競争には後れを取っていたことでした。
以下は気になったポイントです。
・分割解