元ワシントンポスト記者による、エクソンモービルの物語。精緻な取材に基づく大作で、エクソンモービルの考え方や決断の経緯が理解できる。登場する人物は多彩で大物が多く、国家との関わりもよくわかる。巨大石油企業とはどういうものかを理解できた。
「原油流出に対応するために実行すると決めたことが正しいことであ
...続きを読むってもなくても、とにかく素早く実行しなければならない」p16
「エクソンは1919年ジョン・ロックフェラーの独占企業スタンダードオイルが解体されて生まれた。80年後の今もエクソン幹部たちがしばしばワシントンとの関わりを避け腹の底に敵意を抱いている理由は、この痛みが今も克服されていない、ということだった」p19
「エクソンが地元の政治や安全保障に対し及ぼす影響力はアメリカ大使館のそれを上回った」p19
「フォーチュン誌はエクソンを、エクソン・バルディーズ号の事故前にはアメリカ第6位の最も尊敬される企業に挙げていたが、事故後は110位に転落した」p33
「わが社は多額の補償金を払った。わが社は自発的に行動した。そしてわが社はいつまでも払い続けるわけにはいかない。わが社は言わなければならない、これで全部だ、と」p33
「スタンダード・オイルは、そのピーク時にはアメリカの市場の90%を支配していた」p35
「同業他社の幹部たちはエクソンの幹部たちを、情け容赦なく、孤立的で、不可解な、しかし同時に、ロックフェラーが拠り所としたプロテスタントの牧師補佐のように道徳的であるとみていた。「我々は煙草を吸わない。我々はガムを噛まない。これらを嗜む者とは付き合わない」」p36
「エクソンでは、手続きを強調し正統なものを重んじる文化があり、細部にこだわる者が卓越した権威を獲得した。エクソンの採用は、規則に抵抗感のない人々、喜んで生涯一つの会社に勤め、仕事のために転勤することを厭わない人々に偏った」p39
「規律ある結果を得るための唯一の方法は、やりすぎるくらい徹底することだ。つまり、机をたたき脅しをかけなければ、これだけ大規模な従業員たちは易きに流れ、凡庸な結果しか残せない」p46
「会社が縮んでいると見られないためには、毎年10億バレル以上の新規埋蔵量を発見し帳簿に載せていかなければならなかった」p55
「レイモンドは、国務省をエクソンモービルに協力的な政府機関とはみなしていなかった」p141
「(大使館からの報告)エクソンモービルなど一握りのアメリカ石油会社は、たいていの場合、業界固有の問題は自分たち自身で処理しようとする。もし彼らの努力だけで問題解決に至らず、もしくは問題が悪化した場合は、素早く我々に行動を求めてくる」p141
「OPECメンバー7カ国、アルジェリア、イラン、イラク、クウェート、リビア、カタールそしてUAE、いずれもが非民主的で、人権保護が貧弱で、経済的な多様性に乏しい。その他3カ国、インドネシア、ナイジェリア、ベネズエラについては、名目的に民主制ではあるが、広く腐敗し人権保障の貧弱な国々である。アンゴラ、アゼルバイジャン、カザフスタンは、腐敗、拙劣な統治、人権侵害のモデルになりつつある。エクソンモービルは、これらの多くの、人権保護が足りないと判断された各国で操業し、その政府に協力してきた」p220
「(オニール財務長官)資本は臆病者であり、資本は自分に冷たい場所には行こうとしない」p254
「アメリカが1日に消費する2000万バレルの石油のうち3/4は輸送用燃料だった」p307
「我々は常に正しい。ただ、我々は誤解されていたのだ」p335
「世界銀行の現地代表とは異なり、エクソンモービルのカントリーマネージャーたちは、チャドのデビー大統領の期待に上手く応えることができた。「彼らは最初に助けに来てくれた。問題がある時はいつも、腰を下ろし、議論に応じてくれる。彼らには我々以上の経験があると承知している。彼らがこの地に利益をもたらすために来てくれていることもわかっている。我々と彼らの利益は結びついている」p364
「裁判所は大統領の外交政策に軽々しく干渉すべきではない、という考え方は、アメリカの確立した法理となっている」p398
「エクソンモービルはどこにあってもその存在から生ずる影響について考慮しなければならない」p401
「(赤道ギニア)このような国で、政府高官やその親族とビジネスを行うことなく事業を展開することはほとんど不可能に近い。しかし、それでもなお、倫理的にビジネスを行いアメリカ法と地元法に従うことは可能である、と考える」p528
「世界の気候の将来を決定付ける要素としては、中国の産業化のような変革の方が、コペンハーゲンで行われたような会議よりもはるかに意味がある、とエクソンモービルのアナリストは結論付けた」p550
「新たな石油を発見しようという意欲が、あらゆる大手石油会社をリスクの高いフロンティアへと駆り立てた。資源ナショナリズム、特権的に保護された国営石油会社の台頭、そしてエクソンモービルのような超巨大会社の埋蔵量リプレースの苦闘、これらすべてが彼らを、大水深へ、あるいは悲惨な紛争にまみれた弱い国々へ、そして低温が従来型の流出除去方法を無効にしてしまう北極海へと導いた」p609