作品一覧

  • 原子力と政治:ポスト三一一の政策過程
    4.0
    1巻1,782円 (税込)
    原子力政策の〈問題史〉 三一一以後、日本は大きく変わったと言われる。転換点であったことは間違いない。ただ。どう変わったのか、と言われると判然としない。とりわけ中心的な争点である「原子力政策」についてはなおさらだ。 この間、「2030年代原発ゼロ」を掲げた民主党から自民党に政権は変わった。こうした事態を「退行」と片付けるのはやさしいが、三一一が起きた当初の視座では現在の政策を理解するのは難しくなっている。 日本の原子力政策は三一一をへて根本的な変化を蒙った。これは自民党政権になっても変わらない。 本書は、政権交代後の布置の変化を反映させて構想される原子力政策の新たな通史ということになる。 新たな政策のアクターとして浮上しているのは何か? 従来の政府=電力会社という素朴な図式から、現在は経産省×外務省×文科省×米エネルギー省×青森県という構図が新たに浮上している。 原子力は夢から陰謀まで大きな物語を引き寄せる。ただこうした語りは一方的な断罪と隣り合わせだ。今求められているのは夢/悪夢からの覚醒かもしれない。
  • 自民党と公務員制度改革
    3.8
    1巻1,540円 (税込)
    「福田政権が続いていればな……」。政治部記者が集まれば、大体そんな話になる。55年体制下、入念に練り上げられた日本の統治システムは、2009年の政権交代の一年前、福田内閣の突然の退陣で跡形もなく崩壊してしまった──。冒頭の嘆き節は、そうした歴史観を踏まえたものだ。たしかに福田政権では政策が着実に具体化した。最大派閥の領袖、町村信孝を官房長官に据える一方、渡辺喜美ら急進派を巧みに閣内に取り込む。党に目を転じても、小泉改革継続を訴える中川秀直はじめ改革急進派もまだ威勢がよく、そこには複雑に絡み合う利害を調整する、まさに「包括政党」自民党の最後の姿があった。本書は、そんな福田政権の最大の果実となり、後継の麻生政権で迷走していく公務員制度改革に焦点を当てながら、政治について改めて考え直す試みである。公務員改革をめぐる永田町と霞が関、財界と労働界の攻防の中で、最高権力者たちは、大正デモクラシー期の政治任用やGHQによる労働基本権の剥奪など、迷宮のように入り組んだ公務員制度に嵌まり込んでいく。一方、秋葉原事件やリーマン・ショックに象徴されるように、政治家に決断を迫る社会は激しく動揺していた。〈歴史〉と〈社会〉という視角を導入することで、ジャーナリズムとアカデミズムを架橋する新たな政治ノンフィクション!
  • 日本のエネルギーまるわかり
    3.0
    1巻1,100円 (税込)
    「脱炭素のスピードが速すぎる」。日本企業の思いを代弁するとこういう言葉になるだろう。欧州では、2020~30年代までに石炭火力発電をゼロにするなど、50年のカーボンニュートラルに向けて順調にスキームをこなす一方、日本はいまだ東日本大震災の影響が残り、原発再稼働に向けて動き出したばかりだ。燃費の規制などで国が主導する欧州に比べ、日本ではまだ企業の自助努力に頼るケースが多い。コロナ規制でも国家が全面に出てきた欧米と違って、日本は「お願い」に頼る場面が多く、脱炭素対応では先進国の中でも一周も二周も遅い状況となっている。  日本は「GX経済移行債」などの取り組みが始まったばかり。菅前首相が発表した「2030年に温暖化ガス削減目標を46%(13年度比)」を確実に達成していくことが第一関門となる。  本書は、日本のエネルギー政策、脱炭素の取り組みを体系的にまとめた入門書。現場取材を通した姿を描く。

ユーザーレビュー

  • 原子力と政治:ポスト三一一の政策過程

    Posted by ブクログ

    原子力発電に政治が及ぼした影響を解説し、現在の状況も詳しく整理してあり勉強になった。廃炉が決定したもんじゅだけでなく、例えば大学に廃炉となった施設がたくさんありその処分の見通しが立っていない事など、将来の負の遺産に愕然とした。

    0
    2021年07月17日
  • 自民党と公務員制度改革

    Posted by ブクログ

    福田政権から麻生政権にかけての国家公務員制度改革の動きを記述した本。

    渡辺喜美行革相と後任の甘利行革相の動きを中心に、

    自民党内の利害対立、官僚組織や連合などの利害関係者の動き、

    民主党との調整状況などが詳細に描写されていて、

    非常に興味深く読むことができた。


    基本法に基づく関連法案の成立に向けた動きの中で、

    福田政権と麻生政権の改革に対するスタンスの違い、

    甘利大臣と中川議員の調整案に対する内閣法制局が意見を提出する場面、

    なんかが個人的には印象的でした。

    0
    2014年11月25日
  • 自民党と公務員制度改革

    Posted by ブクログ

    明治時代に遡る公務員制度は硬直化しており、時代の変化に対応できていない、、と戦後から言われているにも係わらず、一向にその仕組みが変わることはない。同じ課長職でも等級が異なる厳格な年功序列や、内閣からも独立した人事院の権限など、憲法における労働基本権と絡んで公務員制度改革が非常に難しい問題であることが体系的に理解できた。

    福田内閣時の行革相・渡辺喜美が端緒をつけ、麻生内閣時の行革相・甘利明が与野党内・省庁の抵抗を粘り強く交渉していったプロセスが克明に記載されているが、当時の政局に絡んだ福田首相の投げ出しや麻生首相の破れかぶれ解散といった事態で、この公務員制度改革は不首尾に終わった。

    事実は小

    0
    2013年12月26日
  • 自民党と公務員制度改革

    Posted by ブクログ

    事実は小説よりも複雑で興味深いしまた腹立たしくもある。最後の解散で一気に水の泡となってしまった努力が、新聞なんかで読んでいた時と違って、ぐっと迫ってくるものがあった。
    既に過去になってしまった事件ではあるが、体質などはそのままだと思われるので、今この時もこのようなことをなしているのかと少し暗澹たる気持ちになった。

    0
    2013年12月10日
  • 自民党と公務員制度改革

    Posted by ブクログ

    公務員制度改革を巡り、時の福田、麻生内閣と官界、そして民主党がいかにやり合い、最終的に公務員制度改革がフイになったかまでのプロセスが詳細に書かれている。記述は筆者の綿密な取材と鋭い分析に基づいて書かれており、特に政治に興味がある者にとっては、非常に面白い。

    個人的には、最後の公務員制度改革の難しさへの筆者の見解が的を得ていると思う。公務員制度改革は、郵政等のシングル・イシューの改革とは違い、制度全体を相手にする改革である。このような性質の改革を成し遂げるには、時には冷徹なトップのリーダーシップが必要である。さらには、周囲の各アクターへの注意も要する。それぞれが、何を達成したいのか、何を手放し

    0
    2013年10月08日

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