いわゆる「南京大虐殺」と呼ばれる事件の存在について、当時南京にいた報道関係者、軍の尉官、佐官クラス、外交官等の日本人からの聞き取りによる調査をまとめたもの。非常に面白く読んだ。先の戦争を経験した人たちから直接話を聞ける世代として、私たちはもうギリギリになりかけているのではないか。歴史の中でもっとも伝
...続きを読むわりにくいものが、事件を見ていた一般の人々の体験である以上、この聞き書きは意味のある労作だと思う。日本軍(特に陸軍)では将校であっても国際法の座学がほとんどなかったというなかで、捕虜の扱いに問題があったことは否めないとは思うが、膨大な量の死体を短期間のうちにどこに片付けられたのかという物理的な疑問はきちんと検証すべきだし、肯定派、否定派いずれもまず当時の証言を広く読む必要があるはず(少なくとも問題点の整理という点でも)。マニラ辺りで行われた裁判の本読んでもかなり杜撰な証拠調べが多い。どちらの視点に立つにせよ、まずは本を読んで自分の頭で考える必要があるのでは。