宮沢賢治に関する作家論や作品論は膨大かつ難解なものが多いという印象を受けます。
本書は、「ほんとうの幸い」や「生と死」など賢治研究で頻繁に取り上げられるテーマを平易な語り口で解説しているため、私のような初学者であっても読んでいて息切れすることなく楽しむことができました。読んでいると、国語の教科書に掲
...続きを読む載されているような賢治作品の他にもいろいろと接してみたくなります。個人的に「土神ときつね」が気になりました。
あくまでも概論なので気になる作品に関しては、実際に自ら手にとり数ある研究を参照しながら少しずつ深めていく必要がありそうです。
「銀河鉄道の夜」に関する章で、「永久の未完成これ完成」であるという賢治のことばが引用されていましたが、この「未完成」であることの「曖昧さ」(一般的に悪く言うと青臭さ)が多くの思想家や評論家を惹きつける渦のようなものなのかもしれませんね。