本書では、性に関わる法律を扱っている。
民法という、我々にとって一番身近な法律から、DV防止法、刑法、売春防止法、風営法など「自分には関係ない」と思っている人が多い法律まで様々なものを取り上げる。
法律、というと小難しくてよくわからないと思う読者も多いかもしれないが、本書はとてもわかりやすい。
コラ
...続きを読むムとして各法律の条文が挙げられている点や、身近な事件、判例が挙げられている点が良い。
著者自身が弁護士として実務に携わっているし、法科大学院で教え、しかもなんと法律を専門に学んでこなかったというのだから、すばらしい。
さて、わが国では政治に女性が関わることが少なく、なかなか女性側の視点に立った法律が制定されない。
度々国際機関から勧告を受けているのにも関わらず、遅々として(というか全くと言っていいほど)進まない。
今秋、夫婦選択的別姓の裁判の最高裁判決が出る予定だが、果たしてどう出るか。
司法の判断を待ちたい。
とは言っても、仮に違憲である旨の判決が出たとしても、三権分立だからといって、恐らくいまの政権は改正に踏み切ることはしないだろうが。
現政権は女性の活用ということを声高に叫んでいるが、全くもって不十分だ。
本書に書かれているように、養育費の支払いを逃れる方法、性産業従事者が減らない理由、強姦罪の構成要件、その他もろもろの解決に向けて我らの代表は必死になっているのか?
女性優遇、ではない。
ポジティブアクションに向けて彼らは何をしているのか?
一方で女性の側にも様々な考えがあり、その考えが彼女達自身を縛っているとも言える。
その代表的なものが、性暴力や売春だ。
肌の露出が多かったから、性に奔放だったから、被害にあっても仕方ない、という考えがまだあるように思う。
著者はそれを問題のすり替えとし、事実を隠し社会が負うべき責任を放棄していると言い切っている。
本書で書かれている問題は男女双方の問題だ。
社会で生活している以上、不都合が生じ、それをなくすために法律はある。
そして、それはどちらか一方の考え方だけでは「正義」とはなりえない。
時代は変わる。
社会は変わる。
性の問題を通して、「人間が人間であることを喜べる社会」(132頁)の実現を望み、私自身も尽力したい。