田中詔一著「ホンダの価値観」角川ONEテーマ21(2007)
* ホンダの80%以上は海外ビジネスである。ホンダの海外事業の強さはメディアでも報じられることが多いが、その実践に長く関わった著者としては、企業戦略の云々よりも、日常の業務活動において、いわゆるホンダフィロソフィーというも
...続きを読むのが根本に流れていることを知ってほしい。
* 問題に悩んだときには、最終的にお客様の近いところの立場になって考えることを心がけている。
* ホンダは存在が期待される企業を目指している。海外の事業においても、初期のころから一貫して、利益配当の本国送金などを原則として行わず、現地で再投資に回してきている。もちろんこれが急速な海外拠点の強化につながったわけであるが、「需要のあるところで生産をし、現地の雇用を促進し、利益は現地で再投資」という基本方針が、地域の発展にも貢献したのは言うまでもない。
* 他国の感覚と価値観を理解する。これは国民の文化に起因する商品などのハード面での難しさの例であるが、さらに難しいのは、直接、人間対人間がぶつかり合う商売の世界である。
* 相手を切るときはきりたいという素振りはみせず、続けてやってほしいという強い意思表示とともに、条件を厳しくしていく。そのうちそんなに条件が厳しければやめさせてくれと相手から言い出す。啖呵をきってすっきりしても、何の得にもならない。
* 【駐在4か条】
第一条:駐在員は現地スタッフが束になってもかなわない何かを持っている
→会社にとって駐在員といのは非常に経費がかかる。場合によっては現地社員、数百人に匹敵する。そのためには、しっかりと何かを持っておく必要がある。
第二条:軸足は現地に
→駐在員は2本の足を、日本と現地の両方においておくことである。しかしあくまで軸足は現地に置くのが正しいというのが著者の考え方。日本の都合ばかりを考えていると現地スタッフに信頼されずマネジメントができない。現地化してしまって日本のことを考えない人は自ら凧の糸を切っているようなもの。現地スタッフを登用すれば間に合うだろう。バランス感覚が大切である。
第三条:駐在員は一枚岩であるべき
→現地の人たちが駐在員どれほど観察しているかを過小評価してはいけない。自分たちの生活に関わることであるため、その一挙手一投足を本当によく観察している。彼らは本体の企業について駐在員を通じて学ぶ。その駐在員の意見が、人によって異なれば彼らは混乱する。彼らの前では、駐在員間で軋轢はない、と見せかける努力は必要である。
第四条:自己管理は駐在員の基本
→自己管理とは健康管理や家族のこと、そしてお金や遊びんついて問題をおこなさないという基本中の基本である。日本と違っていきなり権限と自由が飛躍的に大きくなるためだ。
・ 海外での人の使い方について、山本五十六の言葉を引いて説明をする。『やって見せ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば、人は動かじ』
→「やってみせ」駐在員ができて当たり前。むしろ良くあるのは、駐在員がその仕事をやり続けてしまうことである。やって見せるのは少しだけにして、あとは部下を信頼してやってもらうのが良いと考える。
→「言ってきかせて」2つのことがあるが、まずは語学の問題。さらに。それが本当に理解されたかという問題。お互いの認識が不十分で、物事がうまくいっていない原因を現地スタッフの資質に摩り替えている駐在員が多い。
→「させてみせ」これが本当に目指すべきものであるということを認識すべきである。いって聞かせるのが面倒で、自分でやったほうが楽だからとやり続ける人がいる。
→「褒めてやらねば」言葉通りである。