宮本輝のレビュー一覧

  • オレンジの壺(下)
    祖父が秘めていた秘密をなぜ佐和子にだけしか糸口を開かなかったのか、彼女の生き様や性格を見ていれば納得できるような気がする。
    彼女は情に生き、祖父が犯した罪をすべて溶かしてくれるような人物だと思う。すべてを許し、人のためを思う考えを持つ彼女だからこそ祖父は秘密をあかしたのではないだろうか。
    マリーのそ...続きを読む
  • オレンジの壺(上)
    自分の離婚をきっかけに、祖父との日記との距離を縮める。なぜ祖父が佐和子だけにしか自分の秘密をみられないようにしたのか。祖父が佐和子に知ってほしかった秘密とは。秘密と謎が佐和子を闇に引きずり込む。その闇に佐和子は夢中になっていく。
  • 愉楽の園
    私はこれまでに7度タイに行ったことがある。
    この小説を読んでタイで過ごした気分になり読み進むのが楽しみでしょうがなかった。
    タイの暑さや湿度や匂いまでも感じられるような気がした。
    単なる恋愛小説かと読んでいると不思議な人物や出来事などミステリーにも思えてくる。
  • 錦繍
  • いのちの姿 完全版
     エッセイでありながら小説的でもあり、それらの境目を不思議な感覚で味わえる一冊でした。19編それぞれに描かれた生と死が様々な表情を見せてくれます。ほほえましかったり悲しかったり、切なかったりやさしかったり、ときには恐ろしかったり不気味だったり。
     お気に入りは『パニック障害がもたらしたもの』です。私...続きを読む
  • 優駿(下)
    メモりたくなるような指南がたくさん出てきました。宮本輝の小説はそんなことがたくさんあります。ストーリーも楽しく読ませて頂きました。
  • 優駿(上)
    面白くどんどん読めた。久々の宮本輝、やっぱりいい。騎手も大変な稼業だな。引き込まれて読んだ。勝ち負けの世界に身を置くのは厳しい。強くないと生きていけない。人間のイヤなところ、汚いところ、あぶり出されています。
  • 花の降る午後
    誠実でまっすぐで聡明な主人公の典子。
    亡き夫への想いを胸にしまいながら、神戸の老舗レストランを切り盛りしていく姿、周りの人を大切に愛していく姿は誰もが幸せを願いたくなります。

    偶然にも私と同い年の主人公。この年の女性が感じる正直な思い、若くもなく年寄りでもない自分。恋でも仕事でも何かを新しく始める...続きを読む
  • 星宿海への道
    中国旅行中にタクラマカン砂漠近郊の村から、自転車に乗ったまま忽然と姿を消した瀬戸雅人。

    物語は、雅人の2歳年下の弟・紀代志と、彼の子を身ごもった千春の視点で進んでいく。

    雅人は彼が8歳の時に、瀬戸家の養子となった。

    それまでは、盲目の母と橋の下で物乞いをしていた。

    母の死をきっかけに、紀代志...続きを読む
  • 長流の畔―流転の海 第八部―(新潮文庫)
    いよいよ物語も佳境に入ってきた。ハッピーエンドではないのかもしれないけれど、完結が本当に楽しみ。どんな一文で締めくくるんだろう。
  • 私たちが好きだったこと
    感想というか好きな部分。

    「個人のプライバシーに唾吐いて、言いたい放題、書きたい放題。それを読むやつも、なるほどそうなのかて、いとも簡単に信じ込む。どいつもこいつも、口舌の徒になる。俺は、そんなふうになりたくないんだ。逢ったこともなければ、話をしたこともない人を、誉めたり、けなしたりするのは犯罪だ...続きを読む
  • 花の回廊―流転の海 第五部―
    蘭月ビルが中心に展開する。伸仁の体験はすごい、としか言いようが無い。同じ年代の娘が私にもいるが、とても伸仁のような人生経験はさせられていない。

    この小説は大河だ。大きな流れの中で、読者はストーリーに迫ったり、離れたり。私自身も読み始めてから、相当な時間がかかってしまっている。

    一つには、何か悪い...続きを読む
  • 血脈の火―流転の海 第三部―
    カンタンな流れで言うと、大阪に戻ってきて、中華料理屋、雀荘。消防のホースの修繕。プロパンガス。きんつば屋。と仕事を変えていく。台風などいろんな事件があって、うまくいかないが、松坂熊吾のアイデアと実行力で次々と新規事業をモノにしていく。

    個人的には、松坂熊吾の糖尿病発覚が大きい。伸仁は7歳にしてヤク...続きを読む
  • 地の星―流転の海 第二部―
    後書きで北上次郎さんが主人公松坂熊吾について記述して言い得ているのでメモする。『やくざも恐れぬ獰猛さを持ちながら涙もろく、事業の才覚は鋭いくせに自ら進んで人に騙されるお人好し。さしたる学歴はもたないのに古今東西の書を引用し、妻を愛しながら次々に愛人を作り、さらに嫉妬深く、真摯で、知的で、ひとことで言...続きを読む
  • 満月の道―流転の海 第七部―
    読者としても、もはや引くに引けないお付き合いとなる長編。

    宮本輝は自身の生い立ちや経験をなんども作品化している。名前や設定は変えつつもこれまで他の作品で描かれてきた主題がじっくりと描かれている。これは「重複に対する批判」ではなく逆にファンとしては嬉しいことなのだ。筆者の、繰り返してきた年輪と成熟が...続きを読む
  • 森のなかの海(上)
    この作家の作品はハズレがあまりない。阪神大震災で夫の不倫が義母も公認の仲で震災と夫の裏切りで精神的に追い詰められていくのかと思いきや、家族や昔からの付き合いがある老婆などの様々な出来事に流されながらも自分の意思を持ちながらも流されていく。
    不幸をバネに幸せとは思っていないかも知れないけどやりがいもあ...続きを読む
  • 人間の幸福
    著者の作品は、よく読んでいますが、殺人が絡む推理小説は珍しく読みました。読み終わって感じたことは、やはり今までの作品のように人間の罪深さ奥深さが、書かれていました。主人公が自分でも気づかなかった一面を知り愕然とする場面。自分では意図せずに異性を惑わせてしまう女性の恐ろしさ、男達の愚かさ。読みごたえあ...続きを読む
  • 青が散る(下)
    中盤でテニスの試合を長々と展開する場面は中だるみがあったけれど、見所と言うべきなのだろうか、場面場面で情景がみるみる浮かび心震わされた。それは全体にも言えたし、主人公の試合でのメンタルや日常の精神的な青さ、青春が散ると自覚ラストシーン。見事な物語だったと思う。
    そして残るなんとも言えない悲しさ。喪失...続きを読む
  • 三十光年の星たち(上)
    今は廃れた修行という言葉だが、この本を読むとこの古い修行というものに憧れを感じる。自分には30年という時間は残されていないが、これからでも何かひとつ取り組んでみたいという気にさせられた。
  • 星宿海への道
    久しぶりに凄い小説を読んだ気がする。
    実はスケールが非常にに大きくて深い。

    ウイグル族とのつながりが気になっていたが、なるほどなあ。

    尾道が好きで二度行ったが、やはり日帰りではなく、時間をかけて島まで渡ってみる必要があるなあ。