宮本輝のレビュー一覧

  • 野の春―流転の海 第九部―(新潮文庫)
    三十七年かけての
    「ひとりひとりの無名の人間のなかの壮大な生老病死の劇」
    は、遂に完結しました。
    書き上げたのが71歳とは、熊吾との縁を感じずにはいられませんでした。

    「宿命っていうのは、ものすごい手強い敵や」
    宿命と闘いながら、自分の生老病死に立ち向かっていかなくちゃ
    ですね。

    素晴らしい長編...続きを読む
  • 螢川・泥の河
    著者の初期を代表する「川三部作」のうち二編が収録されている。「泥の河」は太宰治賞、「蛍川」は芥川賞を受賞。
    いずれの作品も貧しさによる閉塞感が主人公の周辺を包み、終始暗いトーンで進行する物語だが、未来へ向けて一歩踏み出そうとする人間の強さが描かれている。特に「蛍川」は富山の美しい情景に心が癒される。...続きを読む
  • 青が散る(下)
    一人一人の「若者」をここまで緻密に美しく表現できる宮本輝は凄いとしか言いようがない。

    大人になって大学生活を懐かしむ時期にもう一度読んだら、その時は違った感じ方をすると思う。将来再読したい。
  • 三十光年の星たち(下)
    無理だと思える難題が、次々と仁志に任せられるようになる。しかし、仁志は段々と師匠・佐伯からの薫陶や一つ一つの言葉の意味を自分で考えて、成長していく。師匠に応えたい、師匠の夢を実現したい、その想いで不可能を可能にしていく姿は、師弟関係の美しさを見事に表していたように思えた。
    現代では、さとり世代と言わ...続きを読む
  • 三十光年の星たち(上)
    自分を磨く方法を教えるよ
    働いて働いて働き抜くんだ。これ以上は働けないってところまでだ。もう一つある。自分にものを教えてくれる人に、叱られつづけるんだ。叱られて、叱られて、叱られて、これ以上叱られたら、自分はどうかなってしまうってくらい叱られ続けるんだ。このどっちかだ

    自分は師匠からどれだけ叱られ...続きを読む
  • 野の春―流転の海 第九部―(新潮文庫)
    10年ほど前に読み始めたが、当時まだ第5巻までしか書き上げられておらずそこで中断したままだった。このたび遂に全巻完結し文庫化されたとのことで第1巻から再読したが、1か月で全9巻一気読み、圧倒的な面白さでした。

    なにより松坂一家のみならず登場人物ひとりひとりが背負う人間性を丁寧に描き、自分自身の遠い...続きを読む
  • 優駿(下)
    映画版のラストしか知らなかったけど、非常に満足した作品だった。競馬に対する見方が劇的に変わった。おすすめの本を聞かれたときに紹介したい一冊になった。
  • 優駿(上)
    友人の薦め。ミラクルバード第3戦の描写は圧巻。北海道の牧場や競馬場の情景が目の前に出てくるようで面白く読めた。「ウマ娘。」で競馬を知った人にも読んで欲しいな。
  • 流転の海―第一部―
    ■動物としての人間が本来持つ生命力を感じる■

    舞台は戦後。焼け野原から裸一貫、事業の再起をかけのし上がろうとする松坂熊吾の野太い生きざまと、その荒々しい流れに巻き込まれ、溺れ、また反発する男たち、女たちの盛衰や友情、裏切り、愛憎を描く。

    熊吾は仁義に厚く豪胆、ガキ大将がそのまま大人になったような...続きを読む
  • 血脈の火―流転の海 第三部―
    ■持って生まれた星廻りと血の呪縛■

    第三部のストーリーの舞台はいわゆる「戦後」からの脱却期、日本人がようやく自分たちのために上を目指して歩みだす時代。様々な男女、親と子が登場し、それぞれが持って生まれた星廻り、あるいはその体内にどうしようもなく流れる血を意識させる。

    両親の愛を知らずに育った熊後...続きを読む
  • 優駿(上)
    馬券という紙切れ一枚に詰まった人間模様。
    泥臭い中にも、馬ゆえの神秘的な雰囲気も醸し出す名作。続きが気になります。
  • 幻の光
    『生と死』

    どんな環境におかれようとも、わずかな幸せを求めて懸命に生きようとする力

    そんな力も、理由もなく突然訪れる『死』の前では無力だ

    『死』に向き合いながら生きていく人の儚さを、淡々とした語りの中で感じざるを得ない
  • 道頓堀川
    後悔し続ける中年とジュブナイルの青臭さ。
    当時の“男”の描き方が上手すぎる。
    作者の作品では一番好きです。
  • 優駿(下)

    優駿

    一頭の馬をめぐり、馬主、生産者、騎手、厩務員、予想屋まで全て網羅。
    あとがきにあった、よくわからず・・・いえ、わかりすぎです。
    競馬好きは一度は読んだほうがいいですね。
    ただ、ただ素晴らしい。
  • 青が散る(下)
    大学生という立場で読んだので、また大人になったら違う感想を持つのだと思う。大学生のうちに一度読めて良かった。
    男女の価値観が古くて受け入れたくないなあって思うところも多かった。「女だから、結婚したら亭主と子供を好きになる」とか。
    結末はハッピーエンドとは言い難いけれど皆何かにひたむきになっていて、き...続きを読む
  • にぎやかな天地(下)
    ここで終わるのが潔い
    せめて発酵本かと思ってたけど、
    それがテーマじゃないからね!って
    いやいや。それは宮本輝読者だもの、大丈夫だよね?って
    読者を信じる姿勢だよ
  • 骸骨ビルの庭(上)
    戦前に建てられた英国調のビルはGHQに接収され、屋上にアンテナを張り巡らした姿が骸骨に見えると、いつしか骸骨ビルと呼ばれるようになった。
    この建物をマンションに建て替えようという話が持ち上がるが、ほぼ孤児院としてそこで育った人々は今も居座っており、主人公の八木沢が彼らを立ち退かせるために送り込まれる...続きを読む
  • 骸骨ビルの庭(下)
    マンションへの建て替えを了承したものの、ビルに居続ける茂木氏。彼は生きる場所と意味を与えてくれたビルの正統な後継者である友人阿部氏に不義理を働いた女性に、彼女がそこで知るべきことを知らせる義務感から居残っていた。
    そのビルで育った子供たちの思い出と、彼らを育てた阿部・茂木両氏との思い出とが読んでいく...続きを読む
  • 彗星物語
    14人家族ってだけで登場人物十分多過ぎなのに、各人のキャラが立っていて、作中別段大きな事件が起きるわけではないけれど、笑ったり、そして、最後は嗚咽するくらい泣いてしまった。
    読み終えたあと、家族写真を撮りたくなった。
  • 青が散る(上)
    メモ。
    青くて幼くて脆くて必死に生きてた。
    大人になって世間に擦れて沈んでしまう、若さに裏打ちされた感情を思い起こさせる作品だった。
    誰もが椎名燎平であり安斎克己であり氏家陽介でありむしろ誰でもない。
    この世は怖い。人生は大きい。