宮本輝のレビュー一覧

  • 草花たちの静かな誓い
     久しぶりに宮本輝さんの本を読みました。私のおススメの作家さんの一人です。私が勝手にイメージする宮本輝さんの本に登場する主人公は、①それなりの教養を備えている、②運を持っている、③自分を引き上げてくれる出会いや人とのつながりがある、の三つかな。なのですごく羨ましくて、自分もこんな人物になれたらいいな...続きを読む
  • 錦繍
    宮本輝という小説家の、最も脂の乗った作品が『錦繍』だと思います。

    蔵王の鮮やかな紅葉の描写ばかり記憶に残っていましたが、久々に読み返してみると最後の手紙のやりとりが凄く良かったですね。
    過去を打ち明け、清算し、前に進もうとするふたりの姿と、それを支える家族の存在。温かさしかないです。

    星島照孝氏...続きを読む
  • 螢川・泥の河
    丁寧に綴られた言葉とリアルな情景が秀逸
    人間の生の美しさと強さとそして嫌悪が
    子どもの視点を通して不器用に映し出される
    忘れた頃にまた読み返したくなる一冊
  • よき時を思う
    徳子おばあちゃんが素敵すぎる。筆で書く手紙、90歳で開く華やかな晩餐会、状況が目に浮かぶ!
    全ては、徳子さんの教師時代に起因する。徳子おばあちゃんの素晴らしい先生ぶりもさることながら、登場人物全てが素敵すぎる。玉木少年への導き、吃音を治す練習法、人として立派だなぁと感じ行ってしまった。
    綾乃の兄弟、...続きを読む
  • 草花たちの静かな誓い
    泣いた。
    読んでて本を伏せたくなるような辛い場面もあったけどキクエさんの娘を思う強さと優しさに胸が熱くなった。
    娘さんを逃した後結婚生活を続けるところも、どうしてと思う反面、
    娘と娘を引き取ってくれた夫婦に危害が及ばないよう、事件の波風がたたないようにすることと、夫を監視するためだったんだろうなと思...続きを読む
  • ドナウの旅人(下)
    主人公4人を軸とし、その他脇役の人々の心情や背景が丁寧に描かれ、一人一人の人生はまるでドナウ河のようだと思わせた。

    絹子には最後まで嫌悪感を拭いきれなかったが、彼女は最も身勝手で最も幸福な人生を歩んだのだろう。
    シギィとペーター2人の王子様争いが見たかったなと思った。
  • 螢川・泥の河
    確かに美しい文体で、イメージの中の風景も自分の幼少期が思い起こされる。
    今、考えると初恋だった近所の年上のお姉さん❗
    幸せになってたらいいなーと思いながら読めた作品
  • 螢川・泥の河
    昭和30年代という戦後復興真っ只中の日本が舞台の小説。

    「泥の河」は、大阪で食堂を営む家族と、舟で様々な地域を転々としながら生活を営む家族との何か切なくなるような話。

    「螢川」は、富山に住む家族に降りかかる友人、親との死別などの悲劇、幼なじみとの淡い恋心を交えながら家族の揺れ動く心の描写に美しく...続きを読む
  • 灯台からの響き
    幸せは気づくもの。
    何でもない日常、それとなく過ぎてゆく日々。そこに確かに存在する自分。現在の自分に至る人類の永きにわたる生の継承。それは宇宙の歴史におけるほんの僅かな一瞬。その永遠と瞬間の交わりの中に在ることを尊いと思える心の持ち様。それこそが幸せの本質ではないかと思います。
    変わらぬ事こそが変わ...続きを読む
  • 満月の道―流転の海 第七部―
    前巻から、打って変わっての空気感。
    人生何が起こるかわからない。変転、流転は、常のものか。
    その中でも、変わらぬ己の特質がもたらす陥穽。

    行というものの大切さなども、物語の伏流の中で描かれる。
    銀行の空気や、ふとした瞬間に熊吾が思い出す、戦死した戦友たちへの申し訳ないという思いなど、今の時代に失わ...続きを読む
  • 慈雨の音―流転の海 第六部―
    時代の息吹を感じられる。
    歴史的な経緯を庶民のその時大阪にいた人間として追体験できる。
    生半可な現代史よりもリアル。学問では、知ることのできないもの、知覚できないものを、表現している。文学というフォーマットで表現できるものがあることの実例かも。
  • 三十光年の星たち(下)
    仕事にどう向き合っていくかを考えさせられた。
    とてもいい意味で、3年で1人前という考え方が覆される。自分がどんな大人になっていきたいか、どんな生き方をしていきたいかという、大きなことを問いかけてくれる本。
    20代で出会えて本当に良かったな。
    人生の分岐点で、必ずまた読み返すだろうな。
  • 花の回廊―流転の海 第五部―
    凄惨な人間生活。
    熊吾の激しさ(暴力と経済力)が、そして運が回復してきたように感じる。
    それと対になる、蘭月ビルの人々の生活。破滅的な生き方をする者、他人の生き血を吸う者、そうした生活の中でも文化的に精神的に生きる者、ぐれずに育つ子供たちの純真さ。
    人間と人間の打ち合いの中で鍛えられる伸仁。

    コン...続きを読む
  • 天の夜曲―流転の海 第四部―
    自尊心より大事なものを持たねばならない。

    富山へ移った松坂一家。
    様々な苦難が降り注ぐ。
    その中で、地味溢れる言葉に溢れている。

    徐々に苦しくなる熊吾と家族。追い詰められて来ているが、その中でどう生きていくのか。。

    熊吾のパワーが落ちて来ている感じもある。
    そして、人間の悪意や行動も、善悪では...続きを読む
  • 青が散る(下)
    主人公は大学でスポーツに打ち込み友人たちに囲まれ、一見リア充のようにも見えるが、本気で惚れた女には言いたいことの半分も言えない、今の何者でもない自分に対する不安にただ今はテニスに直向きに打ち込むしかないという部分にはいじらしさや青春の影を感じた。
    主人公はその潔癖さ故に結局は夏子を受け入れず、主人公...続きを読む
  • 血脈の火―流転の海 第三部―
    人間を具に、描いていくとこういう小説になるのか。
    テーマが分からないと思っていた。夫婦、親子、商売、戦後の社会、人間関係、親子関係、恋愛、任侠、などなど色んな要素が描かれていく。どの表象も、人間がおこすこと。自らの意思であったり、抗えない環境や抑えられない衝動だったり、そんなもの全てがごった煮である...続きを読む
  • 地の星―流転の海 第二部―
    人間の複雑さ、極まれり。ゴタゴタとした中で、徐々に熊吾が、房江の人物が立ち上がってくる。

    感動的な場面があったかと思うと、裏切る様に短絡的に動く熊吾。支離滅裂で、非常に賢いところと、非常に愚かなところと。様々な感情と側面が同じ人間の中に同居しており、そんな人間が集まって、すったもんだしている。

    ...続きを読む
  • 優駿(下)
    最後の最後まで、どうなるかわからない小説だった。
    様々な人の細かい心の揺れ動きが積み重なり、最後のオラシオンのダービーで集大成を迎えるという構成で、自分も物語の一員になったかのような読後感だった。
    佐木がミステリアスなままだったが、彼には幸せになって欲しいと思う。
  • 灯台からの響き
    身近な人が亡くなった時、その人の歴史を少し覗いて近くに感じたいという点に共感。
    取り巻くキャラクタも素敵だし、初めての一人旅の心情なんかも良い。
  • 海岸列車(下)
    この本を読んだのは20年くらい前で、読んだ後に鎧駅に行った。それだけでも人生に何らか影響を与えてくれた本だと言うこと。あとは宮本輝の後書が良かったという印象。