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昭和三十六年。東京五輪へ向け復興は進み、大阪行きの集団就職列車が満員となった時代。六十五歳を目前にした熊吾は中古車販売業を軌道に乗せ、往時の覇気が甦りつつある。息子・伸仁は絵画を愛する少年に成長し、妻・房江はアルコールから抜け出せずにいたが、確かに一家に未来は拓きかけていた。熊吾が博美と再会するまでは。
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Posted by ブクログ
満月の道 熊吾が、柳田のモータプールの管理人と並行して始めた中古車販売の「ハゴロモ」は、予想以上に繁盛しスタッフの増員を余儀なくされ四十五歳の玉木則之と二十二歳の佐田雄二郎を新たに雇い入れる。 一家は、ゴルフ場建設に意欲を燃やす柳田の要請で、もう一年モータープールの管理人を続ける事となるが、房江...続きを読むの負担軽減の為柳田商会から高卒の田岡勝己を派遣してもらう。 さらに、またも国立大学の受験に失敗したシンエータクシーの神田を、合格した私大の夜間に通わせる為ハゴロモに雇い入れる。 意に反して事業拡大するハゴロモは、房江の心配をよそに板金塗装会社「松坂板金塗装」を立ち上げる。 そしてその資金繰りの為、柳田商会の松田茂とその母親の貯えからから八十万を借り受ける。 そんな頃、街中で男と言い争う森井博美を見かけるが、その余りにも窶れた見窄らしい姿に愕然とし、後を尾けるも見失う。 だが後日、たまたま食事に立ち寄った居酒屋で働く博美とついに再会してしまうのだった。 同じ頃、神田から玉木が二重に伝票を作成していると言う報告を受けるが、さしたる調査もしないまま忘れてしまう。 再び、 街中でばったり博美と遭遇した熊吾は、ヤクザのヒモと切れないので助けて欲しいと懇願され、博美の顔の傷の負い目もあり逃亡に関わってしまう。 結果、熊吾が東京へ逃した事が漏れ、赤井というヒモに八十万の手切れ金を支払うハメに。そしてその出費は想像以上に大きな重荷となってゆく。 熊吾の手切金によってひとまず自由となった博美は大阪へと戻り、モータープールとハゴロモの近所にアパートを借りる。 結局、博美の持つあまりにも甘味な肉体の虜となった熊吾は、その欲情に抗えず昼間から足繁く通うようになる。 一方、 行方不明となっていた城崎の麻衣子は、蕎麦修行の為に但馬の出石にいた事がわかる。蕎麦専門店としてのちよ熊を開店するにあたりツユの味が決まらず、房江を頼ってきたのだった。 そして… 神田の抱いていた危惧は的中し、またしても信じきっていた己の腹心・玉木の裏切りが判明する。 玉木は数百万にも及ぶ金を着服していたのだ。 そして、その金はなんと森井博美のヒモとその背後のヤクザへと流れていたのだった。
事業の危うさ、身体の危うさ、人間の危うさが入り混じっていて最後までヒヤヒヤしながら読んだ。 そんな中でも生命の誕生や房江が新たに楽しみを見つけて人生を楽しもうとしていてワクワクする。人生を楽しむのは些細な事で良くて、それはこの第7部の満月があらわすように常にそばにある。それに気がつく事が出来れば幸せ...続きを読むなのかなと考えるきっかけになった。
読者としても、もはや引くに引けないお付き合いとなる長編。 宮本輝は自身の生い立ちや経験をなんども作品化している。名前や設定は変えつつもこれまで他の作品で描かれてきた主題がじっくりと描かれている。これは「重複に対する批判」ではなく逆にファンとしては嬉しいことなのだ。筆者の、繰り返してきた年輪と成熟が...続きを読む大樹の中に流れる生命の音を静かに奏でる音に、旅人はただその傍らにたたずみ、時折耳をそばだててその流転する血潮に包まれるだけ。無事完結を祈る作品の一つ。
松坂一家のドタバタ劇は続きます。 60代で立ち会上げた『中古車のハゴロモ』は無事軌道に乗り、むしろ拡大していく彼の商才は大したもんではありますが、またいつものように女絡みで一波乱ありそうでワクテカ状態です。65歳でもギンギンですね、よ!松坂の大将!私も亜鉛摂取して大将に負けないぐらい頑張りマ...続きを読むッスル。 第四部で別れた女(西条あけみ)に偶然出逢ってしまい、焼け木杭に火で5秒で合体、あひゃ、これは言い過ぎか、彼女のヒモ野郎(893屋さん)に手切れ金を渡し、再び失楽園の世界へ・・・ 以前経営していた中古車販売で社員にお金を持ち逃げされて結果会社を畳んだ松坂の大将、またやらかします。信頼していた社員にまたごっそり持っていかれましたね。もー、バカバカ、大将のバカ! ここで伸仁くんが名作『赤毛のアン』に線を引いていた一節〔アンにもの事を冷静に受け取れと言うことは、性格を変えろということになるだろう〕これですよ、正に同じ失敗を繰り返す松坂の大将お前にピッタリやがな。 そして〔松坂熊吾に同じ失敗を繰り返すなということは、性格を変えろということになるだろう〕大将は自分で分かったみたいですね。お疲れ様です。 あとがきでは次回第8部で大将の奥様房江さんが大変苦労すると書かれておりました・・・・房江さん、ファイツ!
文庫判だからこそ巻末についているであろう「解説」で1〜6部のあらましをまとめてくれているのが悪くない。 が、宮本さんの筆致力により第六部からおおよそ9年ぶりに読んだにもかかわらずぐぐっと引き込まれるのがすごい。
今回も熊吾は同じ失敗をしている。信頼している部下に裏切られるのだ。何回同じ過ちを犯しているのかとほぞを噛む思いだ。さすがの熊吾も自分の性格を分析している。 この先房江には困難が待ち受けているそうだ。しかしそれは満月の道であるという暗喩。 伸仁が逞しく成長している。
房江がけっこう良さげに想い語ってるやん て思ってたらあとがきで次巻は最悪になるって知らされて…盛り上げどころになるのは分かるけど今回幸せそうになってきてよかったやん て思ってたのに。まぁ熊吾はでっかい人やからこそちっこい綻びあったっていいやん。伸は15,6なのに良い子過ぎやわ〜このまま成長できるのか...続きを読む気になる。毎回 読んで学んでるのは失敗しても凹み過ぎず素直に反省しポジティブにも考えられる、心持ち スケールでかくしていたいって事かなぁ。
発表、発売が緩やかで、これまでの話を忘れてしまうのが惜しい。主人公熊吾は66歳である。まだ懸命に働いている。様々な事件が襲い、人間模様に翻弄される。2016.11.19
伸仁の成長!良かったなあ…熊吾さん頑張れ。でも、ここからどんどん辛くなるんだよなあ…。最終章の執筆が始まったそうですごく楽しみ。最後どんな文章で終わるんだろうか。
息子の危なっかしいところはだいぶ落ち着いてきたが、親父は懲りないというか、ますます人間臭さを強く放ってくる。 修羅場に直面した時の、熊吾の一貫した肝のすわりかたはすごい。自業自得感は否めないのだけど。 望んでいないけど、そろそろ夫婦関係に一大事か?
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宮本輝
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