小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
数年前、オバマの年間ブック1位に選ばれ話題になった本。真っ直ぐすぎるタイトルと分厚すぎる厚み(とお高すぎるお値段、、)でしばらく避けてきたけど、読まずに生きるより読む人生が良い! と本屋で自分を奮い立たせ購入。大正解、圧巻の作品でした、ありがとうございました!!
ドンとミミ夫妻に生まれた12人兄弟のうち、実に半分の6人が統合失調症と診断されたギャルヴィン一家を追ったノンフィクション。あとがきにもあるように、作中に出てくるエピソード全てが、膨大なインタビューや日記から起こされたノンフィクションという圧巻の作品。事実は小説よりも...的感想しか出てこない、ホント凄まじい読書でした。
兄弟 -
Posted by ブクログ
ネタバレ読書備忘録637号。
★★★★★。
なぜか読んでて涙が出てくる。
ヒトは誰しも完ぺきではない。そもそも完璧であるという尺度はどこに存在するのだろう。失敗して、成長して、いつまでも引き摺って、意識せず他人を傷つけ、それでも他人と関わり無くしては生きていけない。
とある地方の5F建ての古びたマンション。屋上には庭園があり、縁切りの神様が祭られている。ここに住む人たちはいわゆる世間的な普通からちょっと外れてしまい、それでも健気に、世間と折り合いをつけ、幸せを掴むために懸命に生きる。温かい物語。
マンションの管理人であり、屋上神社の神主である統理。血の繋がっていない娘の百音と暮らす。
隣にはゲイの -
Posted by ブクログ
ネタバレ主人公のミチオが住む町で犬や猫が殺され、その死体は足を折られ口に石鹸を詰め込まれるという異常なものだった。そんな時に自殺したS君を主人公のミチオが発見するが先生と警察が来たときには死体が消えていて、後日S君は蜘蛛に生まれ変わって主人公に「自分の死体を見つけてほしい」と頼み込む、というストーリーに最初は「非凡な夏休みが始まるという少し重めなジュブナイルかな?」と思いきやとんでもなく陰鬱なストーリーかつ巧妙な叙述トリックだった。まさか一番怪しい犯人候補がミスリードかつS君だけでなく、妹のミカや知り合いのトコお婆さん、同じクラスの女子のスミダさんまでミチオの妄想(三人とも既にこの世にはいない)だと
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Posted by ブクログ
盲目的な恋と、盲目的な友情。
相反する二つの視点から描かれる本作は、読んでいる中で鳥肌が立つような歪みを感じる。
嫉妬、執着、狂気。選ぶ側と、選ばれる側。快楽と欲。これらが物凄い渦を巻くアンハッピーなバッドロマンス。いや、イヤミスと言ったほうが良いのかな。
著者の作品は『傲慢と善良』『青空と逃げる』を読んだことがあるが、これらの作品にも通ずるようなヒロインたちの繊細な心情の揺らぎや、これらの作品とは全く違った鋭角な歪みが、ものすごい没入感を生んでいたと思います。
いやー、読む手が止まらない作品でした。
辻村深月作品はまだまだ積読があるので、どんどん読んでいきたいなー。
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Posted by ブクログ
自分の親さえ知らない主人公は、狩猟を生業とする男に拾われて育った。生まれて此の方生活の大半を山に依存している。街に出ないわけではない。必要最小限のものを買うために遠い街まで出かけるのだ。金がない。狩猟で得た肉や毛皮・山菜等を売り、銃弾、酒米と僅かな物資を買う。主人公の名前は、稚児の頃、狩猟で得た熊の爪で玩んでいたところから「熊爪」と呼ばれる。
作品に登場する熊は、主に「穴無し」「赤毛」で壮絶な激闘シーンが目に浮かぶ。
熊爪自身の生活が過酷なものにも拘らず、山に溶け込み描写が瑞々しく息吹を感じます。懇意な付き合いがある街の取引先の店主は、山の生活に興味を持ってくれるが、熊爪には有難迷惑の -
Posted by ブクログ
戦時下及び戦後間もない沖縄で根付く人々の生活と葛藤を、米軍駐留兵の精神科医として赴任した主人公の目線を通して巧みに描写する名作品。あくまで沖縄住民の目線ではなく、米軍医師という外の人間の目線を通して描かれている点が大きな特徴である。アートという媒体を通して、現地住民と米軍の間に存在する大きなわだかまりを融和していく過程を描く。しかし、その過程は不完全に終わるし、タイラやヒガへの悲劇を通じてそれがいかに困難なものであるかを伝えてくる作品。それでもヒューマニズムにはまだ希望があるというメッセージを、作者はおそらく最後のシーンを通して語りかけようとしているのではないか。